抄録
【はじめに】近年,3次元動作解析,床反力計,筋電図などを用いた歩行分析が著しい発展を遂げてきた.しかし実際,臨床で行われている歩行分析は,研究で行われている歩行分析とは乖離した現状にある.そこで我々は臨床の歩行分析に客観的分析を導入させる取り組みを行ってきた.その一つが「トレッドミル歩行分析」である.これはトレッドミルが平地歩行とほぼ同一の歩行であるという我々の先行研究の基に,小空間,定常環境設定,多数歩採取容易といったトレッドミルの利点を生かし,3次元動作解析,筋電図計測を併用させるものである.
今回は,トレッドミル歩行を用いた3次元動作解析で得られる「リサージュ図形」による新しい歩行解析法を検討した.
【対象・方法】本研究は,当大学倫理委員会にて認可されており,研究の主旨は,口頭および文章にて説明し,参加への同意を得た.対象は,神経および整形疾患の既往のない健常成人2名(対象A:30歳男性,対象B:60歳男性)とした.計測機器はADAL3Dトレッドミル(Tecmachine社製),3次元動作解析装置Kinema Tracer(キッセイコムテック社製)を用い,30秒間のトレッドミル歩行をサンプリング周波数30Hzにて計測した.マーカー装着箇所は第7頸椎,大転子,膝関節裂隙,外果より下垂した足底部,第5中足骨頭とした.解析は,時間因子とともに,身体および重心のリサージュ図形を検討した.
【結果・考察】重複歩時間は,対象A: 1.04±0.02sec,CV:2.14,対象B: 1.03±0.03sec,CV:2.46であった.歩行率は,対象A: 115.7±2.5steps/min,CV:2.14,対象B:116.4±2.9steps/min,CV:2.46であった.トレッドミル歩行は,同一空間上を歩行する特性から,前額面,矢状面のリサージュ図形が表現しやすくなった.よって,これまで捉えにくかった各身体部位の前額面,矢状面における周期運動がより明確となった.また,リサージュ図形はその組み合わせにより,周期運動における各部位の相互関係を表現することができた.
トレッドミルを用いた歩行分析は,手すりや懸垂装置の併用,多数歩採取容易などの利点から低歩行能力者の分析を容易にする.今後,我々はトレッドミル歩行におけるリサージュ図形の標準値を作成し,臨床における歩行分析の機能的分析指標に発展させていきたい.