理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 734
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理学療法基礎系
8方向下肢最大リーチ距離とバランス能力の関係
*佐々木 理恵子木下 めぐみ岩本 凡子浦辺 幸夫是近 学勝田 茜
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抄録
【目的】我が国の高齢化は急速に進行している。これまでに高齢者の転倒について多くの研究がなされており、転倒要因についても様々なものが取りあげられている。その1つとして前方への歩幅およびバランス能力と転倒の関係についての報告があるが(古西ら、2003)、それ以外の方向との関係については不明である。今回、8方向の下肢最大リーチ距離を測定し、歩行速度および片脚起立時間と関係があるかを検討した。
【方法】対象は、本研究の趣旨に同意を得られた20名の高齢者(男性15名、女性5名、平均年齢63.0±5.9歳、身長160.7±8.3cm、体重58.1±11.6kg、転子果長71.9±4.5cm)である。いずれも健康で運動器に関する重大な疾患を有していなかった。8方向の下肢最大リーチ距離はStar-Excursion Testの原法(Kinzeyら、1998)を修正して行った(以下、8方向テスト)。8方向とは、リーチ側を基準として、前方、同側前斜方、同側側方、同側後斜方、後方、反対側後斜方、反対側側方、反対側前斜方である。8方向テストのために丈夫なビニールシートに1cm毎に線分目盛りを記した測定用具を作製し、中心点に足部を置き、これを動かさないようにして反対肢足尖での最大リーチ距離を計測した。これらの結果と10mの最短歩行時間および片脚起立時間との関係を比較した。8方向テストと片脚起立時間については、左右の下肢の平均値を採用した。
【結果】10m歩行時間は平均4.5±0.5秒だった。片脚起立時間は、開眼で143.0±93.0秒、閉眼で15.6±14.6秒だった。8方向テストにおいて距離の最も長い方向は同側側方で94.4±11.6cm、最も短かったのは反対側側方で61.7±16.1cmであった(他の方向は略す)。8方向テストと10m歩行時間では、どの方向のリーチ距離も相関がなかった。8方向テストと片脚起立時間では、開眼でどの方向のリーチ距離も相関がなかったが、閉眼で後方(r=0.58)、反対側後斜方(r=0.60)、反対側側方(r=0.60)においてそれぞれ有意な相関を認めた(p<0.01)。
【考察】8方向の下肢最大リーチ距離と10m歩行時間および片脚起立時間との関係を確かめた。10m歩行については相関がみられなかったが、この理由としては、今回の対象が運動器疾患のない健康な高齢者であり、測定値のばらつきが少なかったためと考えた。閉眼での片脚起立時間については、これまでいわれていたような前方へのリーチ距離とは相関せず、後方から反対側側方にかけての方向と相関が得られたため、この方向の評価を重要視する必要があるかもしれない。今回は8方向テストという新しい方法を考案し、健康な高齢者で測定を試みたが、バランス能力を維持、向上させるエクササイズにもこの結果が応用できるのではないかと考えた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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