理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 735
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理学療法基礎系
歩行変動からみた減速刺激付きトレッドミルトレーニングの長期効果の検討
―地域在住高齢者を対象にした無作為化比較対照試験―
*新井 智之柴 喜崇大渕 修一佐藤 春彦逸見 治二見 俊郎
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抄録
【はじめに】高齢者の歩行を特徴づけるものには運動速度の低下と変動性(variability)の増大がある。そのため高齢者の歩行能力の維持・改善を目的としたトレーニングを行う場合、運動速度と変動性という両面からのアプローチが必要である。しかし先行研究においては、歩行速度の増加を報告したものが多く、歩行変動(gait variability)に関するトレーニング効果を報告しているものは少なく、さらに長期効果まで検討しているものはほとんどない。我々は歩行変動に対して効果が期待できる減速刺激付きトレッドミルトレーニングを考案し、そのトレーニングの短期効果について報告してきた。そこで本研究の目的は、地域在住高齢者を対象にして減速刺激付きトレッドミルトレーニングの長期的な効果を、歩行変動という指標を用いて検討することとした。
【対象】65歳以上の地域在住健常高齢者30名を無作為に減速刺激群15名、通常歩行群15名の2群に分けた。すべての対象者は、本研究に対する説明を受け書面により研究参加の意思が確認された。
【方法】減速刺激付きトレッドミルトレーニングには、歩行中にスリップ様の減速刺激を加えることのできるトレッドミルを用いた。対象者は週2回・4週間、歩行速度2km/hで15分間のトレッドミル歩行トレーニングを行った。減速刺激群にのみ歩行中に時間及び左右ランダムに減速刺激を加えた。減速刺激は最初の1週間は初期速度の20%減速、2週目は40%減速、3週目からは60%減速と強度を増加させた。
歩行変動の指標として、1歩行周期時間の変動係数とフラクタル指数α(以下α)を用いた。変動係数は標準偏差/平均×100で表される。またαはDetrended Fluctuation Analysis (以下DFA)により求められる。対象者は左踵部に1軸加速度計を装着し、1周40mの円上を快適速度で20分間連続して歩行を行った。歩行中の加速度データから1歩行周期時間を抽出した。1歩行周期時間の測定はトレーニング前、トレーニング終了直後、トレーニング終了1ヶ月後に測定した。統計は変動係数にはFriedman検定、αには二元配置の分散分析を用い、危険率5%で有意差がみられた場合には多重比較を行った。
【結果】減速刺激付きトレッドミルトレーニングの結果、変動係数に関しては、減速刺激群ではトレーニング前とトレーニング終了1ヶ月後、さらにトレーニング終了直後とトレーニング終了1ヶ月後において有意に減少していた。それに対し通常歩行群では有意な減少はみられなかった。またαに関しては、トレーニング方法とトレーニング前後の交互作用がみられた。
【考察】減速刺激付きトレッドミルトレーニングは、歩行変動を減少させる効果があるといえ、さらに長期的にみてもトレーニング効果は持続する。このことから減速刺激付きトレッドミルトレーニングは、高齢者の歩行の特徴である変動性の増大に対し有効であり、変動性を減少させる効果がある。
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© 2005 日本理学療法士協会
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