抄録
【はじめに】姿勢や動作分析を主として運動療法を構築して理学療法を行っている我々にとって,骨盤位は重要な着眼点である.立位・歩行や平衡機能を評価するために臨床では片脚立位をみることが多い.諸家により片脚立位時の重心動揺について足趾把持など下肢の筋力や,骨盤の前額面上の評価との関連は報告されている.今回,片脚立位時の重心動揺について骨盤の前後傾に着目して検討したので報告する.
【対象】本研究の主旨を理解し同意を得られた,健常成人11名(男性8名,女性3名),利き足11肢を対象とした.年齢は22歳から36歳,平均27.5±4.2歳,平均身長167.1±7.6cm,平均体重61.2±8.8kg,平均足長24.3±1.6cmであった.
【方法】重心動揺の測定は重心動揺計(アニマ社製GS3000)を使用し,利き足での片脚立位を開眼にて30秒間測定した.測定条件は両上肢を体側へ自然下垂位とし、遊脚側は骨盤傾斜に影響しないように配慮した.重心動揺のパラメーターは単位軌跡長,外周面積を算出した.骨盤傾斜角は,上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線と床面との平行線がなす角とした.上前腸骨棘と上後腸骨棘にマーカーを貼り,片脚立位と自然立位の骨盤矢状面をデジタルカメラにて利き足側から撮影し,画像解析ソフトScion Imageにて,立位時の骨盤傾斜角(以下,立位時),片脚立位時の骨盤傾斜角(以下,片脚時)を測定した.また,立位時から片脚時を引いた差を変化値として算出した.これらの測定から,片脚時および変化値と重心動揺の関連について検討した.統計処理には,スピアマン順位相関係数検定,ピアソンの相関係数の検定を用いた.
【結果】変化値が-(マイナス),つまり立位時より片脚時に骨盤が前傾したのが1名,その他はすべて後傾した.各々の平均値は,立位時10.0±2.7度,片脚時7.1±3.1度,変化値は2.9±2.7度,単位軌跡長3.5±1.1cm,外周面積3.7±1.5cm2であった.変化値と外周面積に有意な相関が認められた(r=0.66,p=0.02).その他の間には有意な相関は認められなかった.
【考察】片脚立位時の重心動揺と骨盤の前後傾の関連について検討した.立位時に比較し片脚時の骨盤傾斜が後傾するほど重心の位置変化が大きくなることが示唆された.これは骨盤が後傾することで股関節は相対的に伸展位となり大殿筋などの殿筋群の活動性が低下し,骨盤が不安定になることにより重心動揺に影響したと考えられる.今回の結果から立位時と片脚立位時の骨盤前後傾の評価は片脚立位時の下肢支持性の指標となる可能性が示唆された.しかし,単位軌跡長との関連が低かったことから片脚立位時の重心動揺は骨盤だけでなく姿勢制御に関する他の要素との関連をさらに検討する必要も認められた.