理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1071
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理学療法基礎系
外乱時における痴呆高齢者の足圧中心移動量
*坂本 望大谷 拓哉松下 祐士坪井 鈴子砂堀 仁志前島 洋吉村 理飛松 好子
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抄録
【はじめに】痴呆高齢者の転倒は一般的な高齢者に比べて転倒件数が多く,転倒の危険因子の1つにされている.しかし,痴呆高齢者における姿勢制御能力の解明,転倒予防の介入は困難であるとされている.そこで,痴呆高齢者の姿勢制御能力を明らかにする手がかりとして,痴呆高齢者に床面を動かしたとき(外乱刺激)の足圧中心移動距離を測定し,その反応について検討した.
【対象】対象は,アルツハイマー型痴呆を有する高齢者10名(痴呆群;男性1名,女性9名)と痴呆を有さない高齢者7名(対照群;女性のみ7名)であった.年齢は痴呆群,85.5±7.1歳(平均±標準偏差);対照群,80.7±5.7歳であった(n.s).MMSEは痴呆群,15.5±5.1点;対照群,26.6±2.1点であった(p<0.01).被験者全員と施設,痴呆群にはその家族に対し,実験協力の同意を得て実施した.対象条件は,アルツハイマー型痴呆を有しており,屋内歩行自立以上の歩行機能を有する者とした.対象者のうち,痴呆により検査施行が困難な者,脳血管障害を有する者は除外した.整形外科疾患に関しては,変形性関節症などを有する者が数人いたが,後述する検査の施行を妨げる著しい運動障害を有する者は除外した.
【方法】機能的バランス指標(FBS)と独自に作成した外乱器(酒井医療社製)を用いて,動的立位姿勢制御反応時におけるCOP移動量を測定した.測定肢位は外乱器上にて上肢を体側に垂らした安静立位とし,開足,裸足にて計測を行った.床面は前方向に移動速度 100mm/s,移動距離50mmで移動し,ステッピングは禁止とした.外乱刺激は5回予告なしに加え,測定器に内蔵された床反力計により測定した.
COP軌跡はY軸方向(前後方向)の最大移動距離(COP移動量)及び,外乱開始から変移点までの時間(COP応答時間)を計測した.痴呆群,対照群のFBS得点,COP移動量,COP応答時間をそれぞれ対応のないt検定にて比較した.
【結果】FBSは痴呆群,45.0±6.7点;対照群,49.3±5.3点であった(n.s).COP移動量は,痴呆群,81.0±39.0mm;対照群,107.4±26.4mmであった(p<0.001).COP応答時間は,痴呆群,1.16±0.39秒;対照群,1.04±0.15秒であった(n.s).FBS,COP応答時間において差はみられなかったが, COP移動量においては,痴呆群が有意に少ない結果となった.
【考察】外乱時に痴呆群はCOP移動量が小さく,対照群は大きい結果となった.その理由として,痴呆群は関節自由度が小さく,外乱を吸収することが困難で,より転倒しやすいと考えられる.一方,対照群は関節自由度が大きく,姿勢をうまく動揺させることにより外乱を吸収し,転倒を防いでいると考えられる.
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© 2005 日本理学療法士協会
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