抄録
【はじめに】
Alberta Infant Motor Scale(以下AIMSと略す)はPiperとDarrahによって1994年に開発された運動発達評価法である。カナダのアルバータ州で生まれた2202人の乳幼児をもとに、291人のカナダ理学療法士協会小児部門の人達と、6人の国際的な乳幼児運動発達専門家の協力を経て評価項目が選ばれた。適応年齢は0ヶ月~18ヶ月で、正常な運動を示す乳幼児、正常であるが未熟な運動を示す乳幼児などを対象に使用されている。粗大運動の成熟度を評価し、主に運動発達の問題の早期発見、健常児と障害児の鑑別等に有用と報告されている。しかし、本邦においてAIMSに関する報告は見られない。今回、健常児を対象にAIMSを用いた評価を施行したので紹介する。
【対象・方法】
対象は本研究に保護者から同意を得たA生後4ヶ月10日目の女児、B生後8ヶ月4日目の男児、C生後13ヶ月29日目の女児である。方法はAIMSのテキスト「Motor assessment of the developing infant」 を日本語に訳しそれに基づいて以下のように実施した。対象児の姿勢、体重負荷、抗重力運動に注目し、腹臥位、背臥位、坐位、立位の4つの姿勢をとらせ観察する。そして、評価表にある発達順に並べられた腹臥位12項目、背臥位21項目、坐位12項目、立位16項目計58項目の内、観察できた項目の最高・最低レベルの項目間を「window」と呼び、「window」以下の全ての項目と「window」内の観察できた項目を1項目1点として加算し、4つの姿勢の総合点と年齢を資料のデータに当てはめることで標準値と比較した。
【結果】
Aは腹臥位5点、背臥位4点、坐位3点、立位2点の計14点であり標準値の25-50%の間。Bは腹臥位21点、背臥位9点、坐位12点、立位10点の計52点であり標準値の90%以上。Cは腹臥位21点、背臥位9点、坐位12点、立位16点の計58点であり標準値の90%以上を各々示した。
本来、テキストでは評価測定の時間は20-30分程度で可能であるとされているが、本3症例においては10分程度で可能であった。また、対象の姿勢と運動を項目の図に照らし合わせ得点化することが出来るため、小児をあまり観察したことの無い者でも評価することが可能であった。
【考察】
AIMSは短期間で実施でき、経験の少ない試験者でも比較的正確な結果を得られるため、スクーリング検査として有用と考えられた。しかし、1)対象児に最高レベルの姿勢と運動を誘導するためにより適切な課題を工夫する必要があること。2)対象児の年齢によるが、評価者の観察によって対象に少なからずストレスを与えている可能性があることなど今後の検討の余地が残されている。