理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 48
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神経系理学療法
前頭葉内側部損傷後,右上肢に間欠性運動開始困難を呈した症例
*宮本 晴見沼田 憲治村山 尊司高杉 潤
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抄録
【はじめに】
福井ら(1987)は1つの動作から他の動作に移ろうとした時や,対象物をつかむよう指示した時などに,上肢が間欠的に突然動かなくなる現象を間欠性運動開始困難症として報告した.その責任領域を補足運動野(SMA)を含む前頭葉内側面を推定するも,実際の損傷部位が脳梁を含む前頭葉内側面を広範囲にわたっているため責任病巣は推測の域を出ない.またその機序についてもSMAの損傷により意図に基づいた運動開始が障害されることで生じるとの表現に留まり明確でない.今回,我々は間欠性運動開始困難を呈した症例を経験し,その諸検査から運動開始困難の責任病巣の同定とその機序について検討した.
【症例】
71歳男性,右手利き.H15年12月23日,左前大脳動脈梗塞にて発症.発症2ヵ月半経過後の検査所見は以下のとおり.神経学的所見: Br.Stage;右上肢5,手指6.DTR;右上肢ほぼ正常.病的反射;右上肢陰性.表在・深部感覚;右上肢ほぼ正常.MRI所見;左半球SMAに高信号,前部帯状回と一次運動野内側面に中度高信号を認めた.神経心理学的所見;意識清明.WAIS-R総合IQ114.SLTA正常.視空間認知障害,身体認知障害は認めず.手指模倣では左手の拙劣さを認めた.右上肢の運動;日常的に右手の不使用を認めた.運動指示に対して運動が発現しない,もしくは著しく遅延する,目を逸らすなど非注意時では運動を遂行する,上肢の繰り返し運動の際突然運動が停止するなど間欠性運動開始困難症を認めた.運動が発現しない際「動かそうと思っても動かない」との内省報告があった.本能性把握反応と道具の強迫的使用を認めた.発症約5ヶ月経過では,作業場面において右手の補助的な使用を認めた.運動指示に対して運動開始の改善は認めるも,運動開始の遅延が観察された.
【考察】
自発運動の開始において,SMAと帯状皮質運動野は内的動機付けに関連した情報処理機構として重要な役割を演じていることが知られている.本症例の向注意時すなわち内的動機付けが高まることにより運動開始の困難性が生じたことはこれら領域の損傷との関連性が示唆されるとともに,同領域が責任病巣とする福井らの推察を支持するものであった.近年,SMAとその周辺領域において陰性運動野の存在が明らかとなり,同部位が運動開始だけでなく運動停止にも関与することが報告されている.間欠性運動開始困難は,SMAを含むこれら損傷領域の回復過程において出現する不安定な活動性に起因したものとも考えられるが推測の域を出ない.今後症例の積み重ねとともにこの領域の運動障害についてはさらに詳細な分析が必要である.
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© 2005 日本理学療法士協会
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