理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 51
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神経系理学療法
身体運動機能が高いにも関わらず、階段を降りることができなかった一症例
*佐藤 文西村 由香石橋 晃仁吉尾 雅春土田 隆政
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キーワード: 頭頂葉, 両眼視差, 階段
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抄録
【はじめに】症例は、身体運動機能が高いにも関わらず、移動動作で唯一階段を降りられなかった。これは視覚情報を立体的に認識できないからであると仮説を立て、理学療法を実施した。その結果、身体運動機能が変わることなく、階段を降りられるようになったので報告する。
【症例紹介】63歳男性 右利き。平成15年10月7日 左脳出血性梗塞発症し保存的治療。同年12月4日 当院入院。MRI所見では、左中大脳動脈領域に、不連続に多発する皮質枝梗塞を認め、ブローカー言語野、側頭葉後部から頭頂葉下部のウェルニッケ言語領域、更に連続し頭頂葉上部に達する皮質梗塞を認めた。初期評価時、重度感覚性失語あり。ROMは下肢には制限ないが、右肩関節全可動域に軽度制限あり。Br.stageは右上下肢5、手指5。MMTは両上下肢5。感覚は右上肢に表在覚、深部覚軽度鈍麻、異常感覚の訴えあり。姿勢反射は頚部・体幹ともに立ち直り反応、ステッピング反応あり。バランスは問題なく、片脚立位も可能。平地歩行は自立、10m歩行は11.9秒、21歩。しかし、院内を迷う、右側の人にぶつかるなどのことから、院内の移動は監視レベル。階段は、昇段が一足一段で可能であったが、降段は足を出すが一段も降りられなかった。立方体の模写は不十分であり、構成失行が疑われた。
【理学療法アプローチ】症例は、身体運動機能が高いにも関わらず階段を降りることができなかった。これについて、左頭頂後頭側頭連合野と脳梁が障害された為に両眼視差の統合ができず、正面から見下ろした時に蹴り上げの高さや奥行きを認識できなかったことが原因であるという仮説を立てた。そこで、理学療法アプローチは、降段時、蹴り上げが壁面に接する部分に見える縦線と踏み面の横線を見ることを、視覚的な手がかりとして利用し、運動課題を設定した。また、症例は右側への注意が向かない状態であった為、左側面端部を見ることから開始し、手すりも使用して降りることを繰り返した。次に、右側面端部を見ながら同様に行なった。その後、手すりを使用せず行い、最終的には正面から降りるようにした。
【結果と考察】理学療法開始直後、左側面端部を見ながら手すりを使用し降段可能となった。2か月後、右側面端部を見ながら手すりを使用し降段可能、4か月後、左側面端部を見ながら手すりを使用せずに降段可能、6か月後、正面から降段可能になった。今回、症例が階段を降りられるようになったのは、視覚的な手がかりを利用した運動課題を繰り返し行い、右脳の視覚中枢に入ってきた視覚情報から、右頭頂後頭側頭連合野において、階段の高さや奥行きの認識を補えるようになったからではないかと考えた。更に繰り返し運動課題を行なったことは、体性感覚情報によるフィードバック効果もあり、最終的に手すりを使用しないで、スムーズに降りられる要因となったのではないかと考えた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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