理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 65
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神経系理学療法
若年者における運動実行時間と運動イメージ時間は一致するのか?
*松尾 篤森岡 周冷水 誠庄本 康治高取 克彦梛野 浩司徳久 謙太郎平岡 範人菊池 佳世阪梨 さやか
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抄録
【目的】運動イメージ(motor imagery)は随意運動に先行する脳内過程である。運動イメージ過程を調べるために生理心理学的実験では心的時間測定(mental chronometry)が用いられてきた。心的時間測定を用いた先行研究では,健常者あるいは脳卒中患者において運動実行(motor execution)時間と運動イメージ時間の間に一致性を認めている(Decety,1990; Sirigu,1996)。しかし最近になって,脳卒中患者の麻痺側に対して非麻痺側の運動イメージ時間が運動実行時間よりも延長することが報告された(Malouin,2004)。左右肢で不一致を認めるこの結果は,健常者の利き手と非利き手にも当てはまる。しかし,利き手と非利き手での運動イメージを比較した研究(Maruff,1999)は存在するも,運動実行と運動イメージの時間一致性に焦点を絞ったものは見当たらない。本研究では,運動実行と運動イメージの時間的一致関係が利き手と非利き手で異なるかどうかを明らかにすることを目的とした。

【方法】実験に参加するに当たり同意を得られた右利き健常者94名(平均年齢21.6±3.9歳,男性58名,女性36名)を被験者とした。設定課題は,「理学療法」の漢字を実際に,あるいは心的に書字することとした。実際の書字時間測定は,書字開始から終了までの時間を検査者が測定した。心的な書字時間の測定は,心的書字過程の間,被験者自身で開始から終了までを測定した。測定にはデジタル式ストップウォッチを使用し,小数点以下2桁までを記録した。測定回数は実際書字,心的書字ともに5回とし,各々平均値を算出した。利き手,非利き手の運動イメージの時間一致性を評価するために心的書字時間/実際書字時間の比率を算出した。被験者全員が,実際書字と心的書字を利き手と非利き手で実施した。統計処理にはpaired t検定を用い,有意水準は5%未満とした。また,課題終了後に被験者の内省報告を聴取した。

【結果】利き手での実際書字時間は平均10.23±1.82秒であり,心的書字時間は平均15.01±5.08秒であった。非利き手での実際書字時間は平均23.34±5.31秒であり,心的書字時間は平均23.63±7.64秒であった。心的書字時間/実際書字時間の比率では,非利き手1.04±0.33,利き手1.47±0.43であり有意差が認められた(p<0.0001)。被験者からは非利き手の実際書字の試行に困難性,あるいは心的書字においてもイメージ困難感が内省報告された。

【考察】利き手の心的書字に延長を認めると同時に利き手の時間不一致性が明らかになった。一方,注目すべきは非利き手の心的と実際の時間がほぼ一致していた点である。Kawashimaらは複雑手運動時には対側のみならず,同側の運動関連領域の脳活動を認めている。この脳活動が運動学習に必須であり,これは運動イメージ生成にも関与している。本研究において課題難易度や過去の経験の違いが運動イメージ時間に影響を及ぼすことが示唆された。
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© 2005 日本理学療法士協会
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