抄録
【はじめに】
脳卒中片麻痺患者,(以下,CVA患者)の歩行能力に与える因子として,麻痺側荷重能力,麻痺側最大重心移動能力などがもたらす,姿勢安定性要因との関連性は数多く報告されている.しかし,動作速度と歩行能力に関する検討は散見される程度である.
そこで今回演者らは,2条件の開始立位にて音刺激後,非麻痺側下肢を可及的に速く挙上する動作において,音刺激から挙上するまでにかかった時間(以下,動作反応時間)を計測し,動作反応時間と歩行能力との関連性を検討した.
【対象】
対象は,聴覚異常のない片脚挙上動作が一瞬でも可能なCVA患者50名(平均年齢66±12歳)とした.発症からの平均期間は46±51.4ヶ月, FIMの歩行項目(以下,歩行FIM)は,7点が18人6点が16人5点が16人であった.
【方法】
計測は,ユニメック社製の反応速度計を使用し,歩隔は肩幅とし,a)非麻痺側に最大荷重した立位,b)麻痺側に最大荷重した立位の2条件のスタート肢位から,音刺激後に可及的に速く非麻痺側下肢を挙上する片脚挙上動作を行い動作反応時間を計測した.歩行能力は,10m歩行時間,努力性10m歩行時間,timed up and go test,歩行FIMを求めた.
初期測定日より24時間以後に動作反応時間の再測定を行い,動作反応時間計測の再現性を検討した.また,a)b)2条件における動作反応時間と歩行能力との相関を求め,歩行FIM別での動作反応時間の比較検討も行なった.
統計処理には級内相関係数,Spearmanの順位相関係数,多重比較検定を用い,有意水準は5%とした.
【結果と考察】
動作反応時間の計測は,2条件共に相関が認められたが,麻痺側へのWeight shift動作を含んだ条件a)において,より高い再現性を認め,各歩行能力間との相関もより高かった(p>0.01).歩行FIM別での動作反応時間は,条件a)において歩行FIM 5-7間,6-7間に有意差を認め,歩行FIMが高いほど動作反応時間が速くなる傾向が認められた.
以上の結果,CVA患者の歩行能力・自立度と,麻痺側へのWeight shift動作を含んだ動作反応時間との関連性が示唆された.さらに麻痺側へのWeight shift動作を含んだ動作反応時間は,歩行自立度をより反映した評価になりうる可能性があるのではないかと考えた.
今後はデータ数を増やして行くと共に,Weight shiftを含んだ動作反応時間を速めることを意識したexが,歩行能力・自立度改善にどのように反映するかの検討が必要と考えている.