理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 110
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神経系理学療法
つま先立ち運動が脳卒中片麻痺患者の静的立位重心動揺に与える影響
*坂野 裕洋植松 光俊江西 一成梶原 史恵寺島 理恵太田 英登坂元 洋高佐々木 美帆保村 豊小川 紗奈江友田 裕雄中野 寛幸吉安 敏彦深谷 智田中 保名美
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抄録
【はじめに】
つま先立ち運動は、脳卒中片麻痺患者の立位バランス訓練として用いられる訓練の一つである。しかし、脳卒中片麻痺患者がつま先立ち運動を行うことで、どのような運動学的な変化が起こっているのか述べられた報告は少ない。そこで今回、つま先立ち運動が脳卒中片麻痺患者の静的立位重心動揺に与える影響を調査し若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は、発症5ヶ月以上(平均45±44.8ヶ月)経過した脳卒中片麻痺患者26名(右片麻痺患者18名,左片麻痺患者8名、男性17名,女性9名、平均年齢69±8.8歳)。立位姿勢でのつま先立ち運動及び30秒以上の立位保持が可能な者とした。方法は、立位にてつま先立ち運動6回(1回/秒)を3セット行わせ、運動前、直後、10分後に開眼の静的立位重心動揺を測定した。重心動揺の測定は、アニマ社製「グラビコーダー」を用い50ms、20Hzにて30秒間の総軌跡長、及びX方向動揺平均中心変位を測定した。測定肢位は、両足を60°開脚し(左右30°ずつ)、踵部内側を6cm離した直立姿勢とし、両上肢が体側に着いたところから計測を開始した。
【結果】
つま先立ち運動により、運動前に比べ運動直後の総軌跡長に有意な減少を認めた(p<0.05)。X方向動揺平均中心変位は、運動前に比べ運動直後、および10分後に有意な非麻痺側方向への変位を認めた(p<0.05)。運動前の総軌跡長と直後、10分後の総軌跡長の増加量の関係では、運動前に総軌跡長が大きかった者ほど、運動直後、10分後の総軌跡長が減少していた(直後;r=-0.49,p<0.05、10分後;r=-0.43,p<0.05)。運動前のX方向動揺平均中心変位と直後、10分後のX方向動揺平均中心変位の増加量の関係では、運動前にX方向動揺平均中心変位が麻痺側方向に変位していた者ほど、10分後のX方向動揺平均中心変位が非麻痺側方向へ変位していた(r=-0.47,p<0.05)。
【考察】
つま先立ち運動は、脳卒中片麻痺患者の静的立位安定性を向上させた。また、運動前の静的立位が不安定な者ほどその効果は大きかった。左右方向の重心変化では、つま先立ち運動により非麻痺側方向への変位を示した。運動前に重心が麻痺側にあった者ほど、10分後には非麻痺側方向へ大きく変位していた。今回の結果から、左右非対称性の障害像を有する脳卒中片麻痺患者において、つま先立ち運動によって重心を麻痺側より非麻痺側へ変位させることで、静的立位の安定性を向上させていることが示唆された。また、静的立位が不安定で、重心を麻痺側に変位させている者ほど、その影響が大きいことが考えられた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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