抄録
【目的】脳卒中片麻痺患者の股関節屈曲時、前面の痛みとともに屈曲制限がみられることがある。しかし、その発生率や制限因子については明確ではない。そこで、脳卒中片麻痺患者を対象に、骨盤を固定した股関節屈曲角度と自由にしたときの股関節屈曲角度、また最終域における前面の痛みの有無を調べ、痛みと屈曲角度のもつ意味について検討し報告する。
【方法と対象】対象は、脳卒中片麻痺患者28名(男13、女15)、平均74.6±11.7歳であった。右片麻痺14名、左片麻痺14名、下肢Brunnstrom stageは1から6の順に0、6、10、8、2、2名であった。明らかな股関節疾患、大腿骨頚部骨折の既往のあるものは除いた。測定は、背臥位で両側に対して行った。測定1は、日本リハビリテーション医学会の測定方法に準じ、検者Aが反対側の大腿骨の動きを固定し、検者Bが股関節内外旋・内外転中間位に保ちながら他動的に最大屈曲したときの角度とした。測定2は、検者Aが徒手的に骨盤を後傾しないように固定後、閉眼を保ち、検者Bが他動的に屈曲したときの骨盤固定限界時の角度とした。Smith&Nephew Rolyan社製のゴニオメーターを用いて1度単位、3回ずつ測定した。測定2についてはICCを求め信頼性を問うた。また、各最終域での股関節前面の痛みの有無についても確認した。統計処理における有意水準は0.05とした。
【結果】ICCは、麻痺側:0.978、非麻痺側:0.931で高い信頼性が得られた。各測定の平均値は、測定1では麻痺側:111.0±13.6度、非麻痺側:110.0±13.1度、同様に測定2では59.7±12.0度、63.5±12.9度であった。どちらも麻痺側と非麻痺側に有意差はなかった。最終域での股関節前面の痛みは、測定1において、麻痺側10/28名(35.7%)、非麻痺側2/28名(7.1%)で、麻痺側と非麻痺側に有意な差がみられた。測定2では痛みはみられなかった。測定1の麻痺側において、痛みのある群の屈曲角度は平均102.6±12.8度、痛みのない群では平均115.7±12.0度で有意差があった。また、測定1で痛みのあった群となかった群の測定2の屈曲角度には有意な差はみられなかった。さらに、測定1から測定2の屈曲角度を引いた麻痺側の角度は平均51.3±16.1度で、痛みのある群では平均40.2±10.8度、痛みのない群では平均57.4±15.3度で、両群間には有意差がみられた。
【考察】骨盤を自由にして股関節を屈曲した場合に生じた股関節前面の痛みは、骨盤を固定したときの股関節屈曲角の制限によるものではなく、骨盤や腰椎の動きが不十分なために起きる股関節への圧迫から生じるものと考えられた。骨盤や腰椎の動きに着目したアプローチが必要であると考えられた。