抄録
【目的】
現在の理学療法の治療場面において、治療技術に関する研究報告はあるが実際の一日の活動量を測定し、運動量の推移を観察していくことはなされていないことが多い。今後、高齢者および障害者の健康増進という観点からも身体活動量の測定は重要なことと考えられる。そのため本研究では急性期から回復期における脳血管障害患者の身体活動量を比較的簡易な方法である肢位強度法で測定し、回復期の身体活動量と麻痺のステージ、ADL能力との関係を検討した。
【対象および方法】
対象者は2004年8月から10月までの2ヶ月間に316床の総合病院の回復期リハビリテーション病棟に入院した脳血管障害患者48例について、無作為に割り付けし選択した20例(男13例女7例、平均年齢69.6±7.6歳)、平均身長158.5±7.4cm、平均体重53.3±7.7kgとした。身体活動量は複数のPTが面接により24時間の行動記録から肢位強度法(PIPA)によって測定した。麻痺のステージはBr‐stage(以下ステージ)を測定し、ADL能力はFIMの運動機能を求めた。関連性はPIPAと麻痺のステージおよびFIM得点との順位相関係数を求めるとともに、ステージ、FIMの段階で2群に分け、PIPA平均をnonpaired-t検定により評価した。有意水準は5%とした。
【結果】
PIPAは平均1495.4±287.2kcal(男1547.8±314.9kcal、女1399.7±193.2kcal)、FIM総得点91点中の平均は62.95±19.1点であった。順位相関係数rはPIPAと下肢ステージでr=0.47、PIPA とFIMでr=0.33、FIMと下肢ステージでr=0.45でPIPAと下肢ステージおよびFIMと下肢ステージにて相関がみられた。t検定では下肢ステージII以下4名(平均1224±184.4kcal)、III以上16名(平均1563.3±267.5kcal)の群間でPIPAの平均値は有意な差を認めた(p<.05、検出>0.8)。IV以上9名III以下11名、FIM65点以下9名66点以上11名のそれぞれの群間では少例であったために検出力が弱く満足した検定結果が得られなかった。
【考察】
t検定の結果得られた下肢ステージII以下とIII以上のPIPAの差は下肢の機能の回復要因がPIPAに何らかの影響を及ぼしている可能性を示唆すると考えられる。これには下肢の機能向上が座位保持、立位保持、移動動作能力に大きく影響し、その結果病棟で抗重力位を積極的に取ることにつながることなどが考えられる。PIPAとFIM間での相関がみられなかった理由には統計学的にはサンプリングの問題と症例数の少なさがあると思われるが、臨床的には獲得された「できるADL」と病棟で実際「しているADL」の差を表している可能性も考えられる。
【結論】
回復期の脳卒中片麻痺のステージは一日の肢位強度法による身体活動量と関連する。このことは回復期においても麻痺の回復が体力増強につながり、脳卒中の再発予防などの重要な因子になるとも考えられ、回復期の脳血管障害患者におけるアプローチに身体活動量の評価・応用は有用と思われる。