抄録
【目的】小児が罹患する脳炎の原因は様々であり、経過中に若年脳細胞の可塑性に従って脳そのものが回復したとしても、知能低下や運動麻痺、てんかんなどの症状を遺すことがある。今回3例の急性脳炎患者の発症後で、比較的早期からの理学療法を経験したので、その経過と考察を報告する。
【症例紹介】症例1.女児、2歳3ヶ月時発症、第36病日より45日間30回介入、開始時運動発達は4-5ヶ月、終了時運動発達は5-8ヶ月、重度精神遅滞と運動発達遅滞が遺り、退院後は療育専門施設へ転院。症例2.女児、2歳2ヶ月時発症、第22病日より62日間37回介入、開始時運動発達は1-4ヶ月、終了時運動発達は11-24ヶ月、中等度精神遅滞が遺り、退院後当科で経過観察。症例3.男児、2歳11ヶ月、第30病日より27日間18回介入、重度精神遅滞と多動が遺り、退院後は療育専門施設で経過観察。
3例の保護者には本報告に関する十分な説明をし、同意を得ている。
【結果】回復経過に個体差が認められたものの、3症例共に運動の予後に大きな問題は認めなかった。しかし精神遅滞に関しては比較的早期からの介入にも関わらず、大きな変化は認めなかった。またてんかんが発達上の問題として遺った。
【考察】この時期の理学療法の展開に関して、幾つかの提言を示したい。言うまでもなく、可能な限り早期から理学療法を開始することは重要である。これら症例の急性期に共通することは、経過が著しく変化することである。この変化の主たる原因は、脳炎発症直後の脳浮腫に伴う全身状態の低下と複数の症状の混在、その後の脳浮腫軽減とともに新たに出現する神経症状である。従ってこの期間を通して、様々な症状を見極め、適切に評価し、全身状態の改善と共に、治療計画を柔軟かつ慎重に変更する判断が重要となる。また画像所見から得られる情報を基に、精神発達と運動発達の予後を予測した上で計画される理学療法がこれら患児の二次障害を最低限に止めるという点においても重要であると考える。回復速度や回復程度には個体差があり、長期にわたる治療や経過観察も重要となる。
【まとめ】
1.急性脳炎に罹患した小児3例の急性期理学療法を経験した。
2.3例共に、経過中の運動の回復は認められたが、精神遅滞は大きな変化を示さなかった。またてんかんが発達上の問題として遺った。
3.急性期の症状の変化を見極め、適切な理学療法を計画する必要がある。