理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 273
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神経系理学療法
重症心身障害児に対する圧縮ベルトの効果検討
―体幹筋群の筋電図学的検討―
*中林 美代子相馬 俊雄佐藤 理美清水 雪夫東條 恵
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抄録
【はじめに】今回、重症心身障害児に対して、姿勢筋緊張のコントロールを目的に、圧縮ベルトを取り付けた座位保持装置を作成した。本研究では、体幹筋群の筋活動に着目し、圧縮ベルトの使用効果を検討したので報告する。
【症例】症例は、てんかん性脳症後遺症で7歳7ヶ月、当センター併設の養護学校に通学している女児。生後2ヶ月時にてんかんを発症し、全身低緊張で未頚定である。脊柱は胸腰椎部に左凸の側弯があり、胸郭は下部胸郭がフレアーである。運動機能は寝返り可能だが、日常生活動作はすべて全介助、胃瘻による経管栄養で吸引器を使用している。
【座位保持装置】モジュラータイプの座位保持装置である。体幹左凸の側弯に対し、体幹パッド付ベルトを取り付け、骨盤の後傾と前方への滑り出しに対し、骨盤パッド付ベルトとポメルを取り付けた。腹部は低緊張で、腰椎部から崩れが生じていたため、腹筋群の筋収縮と下部体幹の支持性を高める目的で、圧縮ベルトを取り付けた。
【方法】実験前に患児の母親にインフォームドコンセントを得た。左右の腹直筋・腹斜筋・脊柱起立筋群の合計6箇所に対して、表面電極を用いて筋活動を導出し、筋電図装置(日本光電)を用いて測定した。筋電図はサンプリング周波数1kHzでパーソナルコンピュータに取り込み、10Hzから500Hzのバンドパスフィルタ処理を行った。測定は、安静座位開始後10分・20分・30分とし、その時の30秒間を解析対象区間とした。解析は、座位保持装置に座り、圧縮ベルトなし(ベルトなし)と圧縮ベルト装着(ベルトあり)の2種類について、筋活動の比較検討をおこなった。また、座位保持装置使用中の姿勢を、デジタルビデオカメラの撮影から分析した。
【結果】ベルトなしでは、すべての筋において計測中に規則的な筋活動がみられた。開始後30分の時点では、右腹直筋の筋活動は小さくなり、左腹直筋の筋活動が大きくなった。この時の座位姿勢は、体幹が右屈し崩れていた。一方ベルトありでは、時間の経過と共に腹筋群の筋活動が大きくなったが、脊柱起立筋群では筋活動が小さくなった。また、腹筋群において、間欠的な筋活動が増加した。計測中に座位姿勢は殆ど崩れることがなく、体幹は良肢位を保持していた。
【考察】ベルトなしで、左腹直筋の筋活動が大きくなったことは腹部の支持がないために、体幹の右屈により引き起こされたものと考える。ベルトありでは、圧縮ベルトによる持続的な圧迫が吸気時の下部胸郭の拡張を抑え、腹斜筋・腹直筋の筋活動に大きく影響したと考えられる。今回、低緊張を示す重症心身障害児に対して、安静座位にも関わらず腹筋群の筋活動が得られたことより、圧縮ベルトを使用することは、姿勢保持に必要な筋活動を高める手段の一つとして有効であると考える。
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© 2005 日本理学療法士協会
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