理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 279
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神経系理学療法
神経内科病棟におけるFIM導入効果について
*間島 和志小山 優滝口 智子
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抄録

【目的】当院では2004年3月より診療科別に療法士を配属。他部門との連携向上業務の効率化を図り、在院日数は有意に短縮された。さらに2004年4月より神経内科病棟においてADLに対する看護師の意識改善と、リハビリ場面における患者の「できるADL」と、「しているADL」の格差を無くす目的で、療法士主導のもとFIMの勉強会を開催、また看護記録上にFIMの記載を義務付けてきた。その中で、いくつかの知見が得られたので報告する。
【方法】2003年4月~2004年10月までに神経内科病棟に入院していた脳梗塞・脳出血の急性発症例のうち、死亡例・評価のみにて終了した症例を除外した164名を対象とした。FIM導入以前(2003年4月~2004年3月)の96名を対象群とし、FIM導入後(2004年4月~同年10月)の68名をFIM導入群として、両群における1)入院時と退院時におけるFIMと2)Barthel Index 、3)在院日数と4)自宅転帰率を比較検討した。さらに、該当病棟の看護師と神経内科専属の療法士に対し、FIM導入前後における患者のADL情況および看護ケア内容の変化を問う内容のアンケート調査を実施した。
【結果】2群間において、在院日数(対象群51.0±42.33日/FIM導入群34.87±25.56日)はFIM導入群で有意に短縮した(P<0.05)。逆に自宅転帰率(68.8%/57.4%)はFIM導入群で低下。退院時のFIM(86.49±36.04点/91.91±35.2点)とBarthel Index(68.86±30.38点/72.72±32.85点)に有意な差はみられなかったが、1日あたりのFIMとBarthel Indexの改善率は増加した。看護師へのアンケートでは、FIM導入に対し好意的な意見が過半数をしめ、ADLに対する意識が改善した。FIM導入前後において、約半数の看護師と療法士が「できるADL」と「しているADL」の格差が縮まったと感じていた。
【考察】在院日数の短縮と自宅転帰率の低下は、2004年度に開設したリハビリ病院の影響と考えられ、また客観的なデーターからは「できるADL」と「しているADL」の差が縮まったとはいいがたい。しかし、病棟にFIMを導入することは看護師のADLに対する意識を改善させる有効な手段であることが示唆され、これは業務としてFIMを採点する必要性から患者のADLに目を向けるようになったということと、ADLを評価する上で共通の指標ができたことで看護師同士および療法士間との情報共有が明確かつ容易となったためと考える。FIMとBarthel Indexの改善率が増加したことはこれらの副次的な効果であると考える。

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© 2005 日本理学療法士協会
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