抄録
【目的】クモ膜下出血(以下、SAH)では発症時の意識障害、脳血管攣縮、再出血が予後に影響を与えるとされるが、予後予測に関する報告では対象に死亡例や理学療法(以下、PT)の対象とならない重症例も多く含まれている。今回我々はPTの対象となったSAH患者の機能予後の把握が臨床上重要と考え、機能予後と影響を与える要因を検討した。
【方法】2000年4月~2003年3月までに当院にてPTを施行したSAH新鮮例、連続56症例(男性28例、女性28例、平均年齢60.5±11.7歳)を対象とした。退院時における機能予後をmodified Rankin Scale(以下、mRS)を用い分類し、転帰及び退院時の移動能力との関係を検討した。また機能予後に影響を与える要因として、発症時年齢、性別、高血圧及び糖尿病、入院時のHunt&Kosnikの重症度分類(以下、Hunt分類)、FisherによるSAHの分類(以下、Fisher分類)、発生部位、発症時所見(急性水頭症、脳内血腫、運動麻痺等の局所症状)、遅発性所見(再出血、脳血管攣縮、慢性水頭症)、臨床症状(Japan Coma Scaleで2桁以上の意識障害の遷延、発動性低下、運動麻痺等の局所症状)について検討した。統計学的処理にはχ2乗値あるいはKendallのτ-bを用いた独立性の検定とFisherの正確検定を用いた。
【結果】退院時のmRSではGrade0(全く症状なし)が6例、Grade1(通常の日常生活および活動は可能)が9例、Grade2(介助なしに自分のことができる)が11例、Grade3(何らかの介助を必要とするが、介助なしで歩行可能)が7例、Grade4(介助なしに歩行や日常生活が困難)が11例、Grade5(寝たきり、失禁、常に看護、注意が必要)が8例、Grade6(死亡)が4例であった。Grade0~3の33例では30例が自宅退院し、退院時移動能力は屋外歩行自立18例、屋内歩行自立12例及び要監視3例であったのに対し、Grade4~5の19例では18例が転院となり、移動能力は介助歩行6例、車椅子全介助13例であった。
Grade3以下と4以上で2分割すると、機能予後に影響を与える要因は、発症時年齢(P<0.10)、入院時のHunt分類(P<0.01)及びFisher分類(P<0.001)、発症時所見では脳内血腫の有無(P<0.001)、発症時運動麻痺の有無(P<0.10)、遅発性所見では慢性水頭症(P<0.10)、臨床症状では意識障害の遷延(P<0.001)であった。
【考察及びまとめ】SAH発症後PT施行例の退院時の機能予後はmRSでGrade3以下と4以上で2分され、発症時の重症度、脳内血腫の有無、意識障害の遷延等が強い影響を与えていた。本結果はPTの対象となったSAH患者の機能予後推測に有用と考える。