抄録
【はじめに】Modified Tardieu Scale(MTS)はTardieuら(1954)により開発され,その後Heldら(1969)とBoydら(1999)によって改変された痙縮の評価指標である。筋伸張時の関節角度(ROM)を測定する項目と筋の反応(Quality of Muscle Reaction;QMR)を5段階(0~4)で測定する項目で構成される。筋の伸張速度(Velocity of Stretch)はV1(as slow as possible),V2(falling under gravity),V3(as fast as possible)があり,V1での最大ROMをR2,V3で“ひっかかり(catch)”が生じたROMをR1で示す。本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者の下腿三頭筋の痙縮評価におけるMTSの信頼性を検討することである。
【対象】本研究の趣旨及び方法を説明し同意を得た脳卒中片麻痺患者12名(男8名,女4名,平均年齢65.3±9.8歳,平均罹患日数157.5±168.8日)の麻痺側下肢12肢とした。下肢Brunnstrom StageはII4名,III4名,IV2名,V2名であった。
【方法】評価者2名(A,B)が測定した。測定肢位は背臥位で股関節膝関節90度屈曲位と,股関節屈伸中間位膝関節完全伸展位の2つの肢位とした。伸張速度はV1とV3を用いた。足関節背屈のR1とR2を腓骨への垂直線を基本軸,第5中足骨を移動軸として1度単位で測定可能なゴニオメーターで測定し,同時にQMRを測定した。両評価者共各肢位で2回測定した。評価者内信頼性は,R1及びR2の級内相関係数(ICC)(1,1)とQMRのkappa係数を2回の測定値から算出し検討した。評価間信頼性は2回測定のうち1回目の値を用いて,R1及びR2のICC(2,1)とQMRのkappa係数により検討した。
【結果】評価者内信頼性:R1及びR2のICC(1,1)は0.95~0.99,QMRのkappa係数は0.67~1.00であった。評価間信頼性:R1及びR2のICC(2,1)は0.95~0.98,QMRのkappa係数は0.63~1.00であった。
【考察】R1とR2のICC(1,1)及びICC(2,1)は全て0.95以上であり,評価者内及び評価者間共に高い信頼性を示した。QMRのkappa係数は評価者内,評価者間共に0.63以上で実質的な一致を認め良好な信頼性を示した。痙縮の評価は神経学的要素と非神経学的要素を考慮する必要がある。MTSはR1により前者を,R2により後者を評価でき,さらにQMRにより伸張時の筋の反応も評価できる。また使用器具はゴニオメーターのみという簡便性もある。これらの特徴と本研究結果からMTSは痙縮の評価指標として臨床的有用性が高いと示唆された。