理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 300
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺患者における坐位リーチテストとADLとの関連
*畑迫 茂樹村上 忠洋村瀬 政信山中 主範
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抄録
【目的】われわれは第20回東海北陸理学療法学術大会において,坐位バランスを評価する指標として坐位リーチテストが,重心移動距離を反映する妥当性のある評価で,かつ再現性のあることを認めた.今回,坐位リーチテストと日常生活活動(Activities of Daily Living:以下,ADL)との関連を検討し,坐位リーチテストの有用性について報告する.
【対象】対象は,10分以上の端坐位保持が可能な脳卒中片麻痺患者26例(男性15例,女性11例)で,平均年齢は65.7歳(44~81歳)であった.診断名は脳出血16例,脳梗塞10例で,下肢のBrunnstrom Recovery Stageは2:3例,3:10例,4:6例,5:3例,6:4例で,発症後の平均期間は3ヵ月16日(24日~9ヵ月3日)であった.
【方法】坐位リーチテストとして,非麻痺側上肢を可能な限り前方へ伸ばし,元の位置に戻る課題を行わせた.開始肢位は43cmの高さのプラットホームベッドで端坐位をとらせ,ベッドの端から膝窩部までの距離を10cm離し,肩峰と大転子を結ぶ線が床面と垂直になるよう,体幹をできるだけ直立させた.さらに,非麻痺側上肢を水平位まで挙上させ,肘関節伸展位,手関節中間位,手指伸展位にて手掌を床面に向けた.開始肢位から最大に前方へ到達した距離を3回計測し,その平均値を「到達距離」とした.ADLの評価は機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:以下,FIM) を用い,セルフケア(食事,整容,清拭,更衣・上半身,更衣・下半身,トイレ動作)と移乗(ベッド・椅子・車椅子,トイレ,浴槽・シャワー)の9項目を測定した.
 坐位リーチテストの「到達距離」とFIMの各項目との関連は,スピアマンの順位相関係数を用いて検討した.
【結果】「到達距離」とFIMの各項目との相関係数は,食事:r=0.62(p<0.01),整容:r=0.54(p<0.01),清拭:r=0.45(p<0.05),更衣・上半身:r=0.46(p<0.05),更衣・下半身:r=0.46(p<0.05),トイレ動作:r=0.39(p<0.05),ベッド・椅子・車椅子:r=0.41(p<0.05),トイレ:r=0.42(p<0.05),浴槽・シャワー:r=0.61(p<0.01)であり,すべてにおいて有意な正の相関が得られた.
【考察】セルフケアの項目は主に坐位で行う動作であり,坐位でのバランス能力を要求される.坐位リーチテストは,端坐位における動的なバランス能力の指標であるため,FIMのセルフケアとの関連が得られたと考えた.移乗の項目は坐位から立位へと移行する動作であり,坐位での前方への重心移動能力がその準備段階として必要であるため,坐位リーチテストとFIMの移乗との関連が得られたと考えた.
 坐位でのリーチ動作は,ADLの自立度を規定する基礎的な動作として重要であり,その測定の有用性が示された.
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© 2005 日本理学療法士協会
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