理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 301
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺者の歩行時における視線の変化と歩行レベルについて
―10m自由歩行と課題歩行時の比較・検討―
*金城 健太郎高良 秀
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抄録
【はじめに】
脳卒中片麻痺者は歩行中、視線を足元に固定し他の事象に視線を向ける時、停止する場面を多く目にする。しかし、日常生活では多様な視線の変化が必要と考えられる。今回、自立または監視レベルの脳卒中片麻痺者の自由歩行と足元および目標物へ視線を注視する歩行課題を用い、10m歩行速度を算出し歩行レベルに対する関連性を検討した。
【対象】
当院で入院または外来リハを実施中の症例および当院デイサービスの利用者で明らかな高次脳機能障害がなく、杖・補装具の有無を問わず10mを監視または自立で歩行可能な片麻痺の症例20名。内訳として右片麻痺者14名、左片麻痺6名。年齢59.9±10.54歳。下肢Brunnstrom stage(以下:Br.stage)3が10例、4が4例、5が5例、6が1例を対象とした。
【方法】
10mの1)自由歩行速度と2)足元を注視する歩行(以下:足元課題)3)前方の目標物を注視する歩行(課題設定は10m歩行路の延長線上にバルーン直径90cm赤色を椅子に設置。以下:前方課題)を行なった。歩行監視・自立群の自由歩行速度に対する足元・前方課題歩行速度の変化率をそれぞれの群で比較し、また、歩行自立に対する運動機能関連因子(上下肢Br.stage、感覚、使用した杖の分類)のオッズ比を求めた。
【結果】
自由歩行と前方課題では、監視群が自立群より有意に(p<0.05)高い値であった。また、オッズ比は有意差なかったが、上肢Br.stageが3.5、下肢Br.stageが1.3、感覚が0.9、使用した杖の分類で2.3であった。
【考察】
前方課題時の監視群への影響としては、前方を注視することで前庭系と視覚系の二つの要素がより効率的に働いたものと考えられた。前庭系は頭部の位置を安定させ伸展位を保持することで、全身的に抗重力伸展活動が促され、身体中枢部は安定し、下肢ステップ、上肢スイングもダイナッミクな状態になったと考えられた。オッズ比からは上肢が分節的な運動へと変化することで体幹の伸展活動をさらに高め、それに伴い杖での補助も不要になっていくことが考えられた。また、視線を前方へ移すことで目標物自体からは目的地までの距離感が得られ、周辺視野においては見え方の変化が運動視差となることや、移動時における背景の流れが連続的変化となり、スピード感が得られたと考えられた。従って、加速する為の自律的な身体運動を促す知覚フィードバックとして機能し、より歩行速度を加速させるための条件が得られたものと考えられた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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