抄録
【はじめに】脳卒中片麻痺患者の立位安定性は機能予後にも影響し,安静立位では評価し得ない外乱に対する姿勢制御の評価は臨床上有用である。動的立位バランスの評価法として我々は連続水平方向刺激を与える重心動揺計を開発し用いてきた。今回は脳卒中片麻痺患者に静的条件と前後水平方向刺激を加え異なる刺激速度下で健側,患側の差を検討した。
【対象】裸足立位保持可能な脳卒中片麻痺患者16名。内訳は平均年齢61.8±8.9歳,男性8名,女性8名, Brunnstrom stageは3以上であった。ADLはFIM平均118.9±6.1と自立例で全例屋外歩行自立していた。
【方法】当院にて開発した重心動揺計は左右2枚の床反力計が同時水平移動する。対象者には裸足で左右の床反力計上に10cm平行開脚立位で上肢は自然下垂位,開眼し前方を注視するように指示した。20秒間の静止条件の後,移動距離10cm,速度は2条件,周波数0.2Hzおよび0.5Hzの正弦波を示す前後連続水平方向刺激を加えた。分析は静的条件,動的条件0.2Hz,0.5Hz各々刺激開始より前後反復5回までとし,刺激方向と同方向の足圧中心前後成分Y座標(COP-Y)について,各条件下における足長の割合(踵0%から爪先100%)で示しCOP-Y平均座標(Y座標),最大前方偏位(Y前方),最大後方偏位(以下,Y後方),また左右の体重に対する荷重量(荷重率)について患側,健側で比較した。
【結果および考察】COP-Yは静的条件でY座標は健側47.3±6.0%,患側47.8±10.4%と左右差は認めなかった。Y前方は健側54.0±5.0%,患側52.3±11.8%,Y後方は健側38.0±7.5%,患側42.0±9.8%であり有意差はなかった。動的0.2HzではY座標は健側48.9±5.8%,患側46.7±11.4%と差はないが,Y前方は健側65.6±5.9%,患側54.7±12.5%と有意に健側が大きく(p<0.01),Y後方は健側28.0±7.5%,患側34.4±12.3%で有意差を認めなかった。動的0.5HzではY座標は健側46.7±5.2%,患側45.3±14.0%と有意差はないがY前方で健側80.5±8.7%,患側66.3±19.4%と健側の方が有意に前方偏位は大きく(p<0.01),Y後方は健側19.3±5.7%,患側27.9±14.7%と健側で有意に後方偏位も大きいことを示した(p<0.05)。荷重率は静的条件では健側58.4±7.9%,患側41.3±11.5%と有意(p<0.01)に健側荷重し,動的0.2Hz,0.5Hzとも静的条件に近似値を示し条件間の差はなかった。脳卒中片麻痺患者において静的条件ではCOP-Yの動揺範囲に左右差を認めないが,動的条件では刺激速度が速いほど健側の前後動揺範囲が広く荷重率も健側に比重し,動的な姿勢制御は健側優位で調整することが示唆された。