抄録
【はじめに】
脳卒中片麻痺患者のバランス低下に対してのアプローチは様々でその刺激は適宜でなく均一性に乏しい。前回の研究において、松下電工フィットネス機器用乗馬シミュレータ「ジョウバ」を脳卒中片麻痺患者に用いて、静的立位の重心動揺にて効果判定を行った。しかし、機器の特性から片麻痺において乗馬を使うにはケースが限られた。さらに身体の固定が弱く安全面の問題もあった。今回、これらの問題を改善し動的座位刺激装置として改良し脳卒中片麻痺患者に用い、その効果について加速度計測により評価を行ったので報告する。
【対象】
当病院入院中または外来通院中の脳卒中片麻痺患者6例とした。なお、本研究は当院倫理委員会の承認を得て、すべての対象者のインフォームドコンセントが得られた後実施した。
【方法】
今回、松下電工フィットネス機器用乗馬シミュレータ「ジョウバ」を背もたれ用椅子に改良し安全面の配慮として大腿部固定ベルトを装備した。(以下動的座位刺激装置)被験者は、両下肢を揃えて座り、安全用ベルトにて大腿部固定した。動的座位刺激装置の動きとしては、ジョウバ同様の前後スライド、前後スイング、左右スライドの動作を組み合わせた動作である。
実験課題は、動的座位刺激装置に座位をとらせ5分間施行した。効果判定のために加速度計を頭部・腰部に装着し計測を行った。
また、動的バランス評価として、ファンクショナルリーチテスト(以下FRT)を合わせて施行した。
解析方法としては、動的座位刺激装置による刺激開始1分間と終了前1分間の加速度を抽出し、頭部腰部における前後左右の加速度の規則性・位相性およびFRTについて検討を行った。
【結果】
1、腰部の方が頭部よりも規則性が高かった。
2、左右の方が前後よりも規則性が高かった。
3、開始1分間の方が終了前1分間よりも規則性は高かった。
4、開始1分間の方が終了前1分間よりも位相性が小さかった。
5、FRTにて動的座位トレーニング装置施行後に値が長くなった。
【考察】
結果1から、頚部に比較して身体構造上、体幹筋の分量が大きいため動的座位刺激装置の一定刺激を直接的に受けたためであると考えられる。結果2から、麻痺の影響において左右のバランスが制御しにくいため動的座位刺激装置の一定刺激に影響されたと考えられる。結果3・4から、開始1分間は動的座位刺激装置の一定刺激に対して過度に体幹の固定する姿勢保持いわゆる構えが生じていたが、時間の経過とともに今回の刺激量を学習することで過度な反応を行わずに姿勢の制御が行えるようになったものと考える。
結果5から、動的な刺激に対して体幹や下肢筋群を能動的に使うことにより筋の活動性が高まり支持基底面内での重心移動範囲が拡大したものと考える。
今回の結果より片麻痺患者において動的座位刺激装置を使用することで座位バランストレーニング効果が期待できると思われた。