理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 632
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺患者における歩行能力とFIMスコアの関係について
*吉田 純子駒場 章一佐藤 剛
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抄録
【目的】
 臨床場面では脳卒中片麻痺患者(以下片麻痺患者)の歩行機能を自立,監視,介助などの移動能力レベル別に分類し,患者の指導や管理に用いられることが多い.しかしこの移動能力を分類するための基準は不明瞭で,実際は担当理学療法士の経験に基づいた主観的要素で決定されているのが現実であろう.
 今回,臨床現場で歩行状態を自立,監視,介助の3段階に分類された片麻痺患者は,どのような歩行特性を持ち,実際の生活自立レベルを有するのかについて客観的検討を試みたので報告する.
【対象と方法】
 対象は,歩行可能な片麻痺患者18名(男8・女10,発症後平均経過期間:1年10ヶ月,平均年齢:69歳)である.内訳は歩行能力別分類では介助群5名〔Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)3:2名・4:3名〕,監視群7名(BRS 3:3名・4:4名),自立群6名(BRS 3:3名・4:1名・5:2名)である.なお,健常高齢者8名(平均年齢:69歳)を対照群とした.
方法は,普段装着している補装具を用い,屋内平地を10m歩行する間の歩数(歩),歩幅差(cm:麻痺側歩幅-非麻痺側歩幅),スピード(m/秒)と,ADLの自立度を示すFIM値との関係性から各対象者の歩行能力を分類する決定基準を検討した.
【結果】
 歩数平均は対照群の17.0±0.68歩に対し,自立群32.9±14.51歩,監視群40.0 ±10.63歩,介助群59.7±31.90歩であった.歩幅差については各群0cm,7.0±9.33cm,16.0±19.63cm,11.4±10.52cmであった.スピードに関しては1.0±0.04m/秒,0.5±0.25m/秒,0.3±0.12m/秒,0.2±0.13m/秒であった.何れの項目においても段階的な能力差を認めているが,中にはスピードの監視群と自立群のように差のない項目も認められた.
 次にFIM値と歩行能力の関係については,介助群において90点以下,監視群90点から110点,自立群は110点以上に大部分が分布しており,各群間に有意な差(p<0.05)が認められた.
【考察】
 多様な症状を呈する片麻痺患者の歩行自立度の判定は,多角的な評価結果に基づき的確に行わなければならないが,それにはセラピストの感覚的評価要素も含まれており,充分な臨床経験を持たない者にとっては,難しい課題の1つである.
今回の結果では,歩行能力分類においてFIM値が90点と110点を境に一定の関係性を認め,片麻痺患者の歩行自立度を判定する上でFIMは有益な一指標と考えられた.しかしFIMは介護量を計測するために開発された尺度であるためか,歩行スピードもFIM値も自立レベルである症例が監視群にとどまるなど介助量の少ない片麻痺患者には課題を残している.今後はFIM値に表された各項目についても検討を深め片麻痺患者の歩行能力分類との関係を吟味していきたいと考えている.
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© 2005 日本理学療法士協会
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