理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 631
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺患者の到達運動における見積もり機能
*津野 雅人片岡 保憲清水 大輔森岡 周
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抄録
【はじめに】
 ヒトは空間にある目標物に対して到達運動が可能か否かを実際に運動することなく判断することができる.これは運動せずとも運動中および運動後の自己身体位置を空間に表象できるためである.本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者の到達運動における見積もり機能を三次元的に分析することである.
【方法】
 対象は脳卒中片麻痺患者9名(平均年齢70.6±15.3歳)とし,コントロール群に健常成人9名(平均年齢23.7±2.6歳)を設けた.実験は体幹の運動を伴わず,上肢運動のみで到達可能な見積もり距離と上肢長(肩峰から中指先端まで)を測定し,それらの誤差を比較した.
方法は一辺180cmからなる3枚のプラスチック製の板を繋いで前面,側面,上面の三面を作成した.その三面に,片側上肢の肩関節水平内転30°から30°刻みで水平外転90°までの5方向に対して,肩関節屈曲60°から30°刻みで屈曲150°までの4ヵ所ずつの計20ヵ所の穴と,肩関節直上に1ヵ所の穴を開けた.その穴から先端にレーザーポインターを取り付けた棒を差し込み,測定肢の肩峰をポイントしながら肩関節に接近し,レーザーポインターの先端に到達可能と感じる距離を回答させた.見積もり距離の測定は非麻痺側から実施し,測定順序はランダムに行った.実験肢位は車椅子座位または椅子座位で,見積もり距離測定時には上肢を膝の上に置くように指示し,上肢には布をかけて視覚的な確認ができないようにした.
測定で得られた見積もり距離と上肢長の誤差を算出し,比較検討した.麻痺側と非麻痺側の誤差値の比較にはpaired t-testを用い,麻痺側と非麻痺側の角度別誤差値の比較には一元配置分散分析,多重比較検定(Fisher)ならびにKruskal-Wallis順位検定を用いた.また片麻痺患者と健常者の誤差値の比較にはunpaird t-testを用いた.なお,有意水準は5%未満とした.
【結果】
 片麻痺患者の麻痺側および非麻痺側における角度別誤差値には有意差は認めなかった.また麻痺側と非麻痺側の誤差値の比較においても有意差は認めなかった.麻痺側と健常者との比較では肩関節直上,水平外転90°での屈曲150°,水平外転60°での屈曲120°150°,水平外転30°での屈曲120°150°,水平内外転中間位での屈曲90°150°,水平内転30°での屈曲60°150°において有意差を認めた(p<0.05).非麻痺側と健常者との比較では肩関節直上,水平外転90°での屈曲120°150°,水平外転60°での屈曲60°150°,水平外転30°での屈曲60°120°,水平内外転中間位での屈曲150°,水平内転30°での屈曲150°において有意差を認めた(p<0.05).
【考察】
 以上の結果より脳卒中片麻痺患者における到達運動距離の見積もり機能は著明に低下しており,脳卒中片麻痺患者は視覚座標系から運動座標系への座標変換過程および身体表象を作成する過程に障害があることが示唆された.
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© 2005 日本理学療法士協会
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