理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 660
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺者におけるADLレベル別の定常負荷でのエネルギー代謝の検討
―呼気ガス分析を用いて―
*新地 友和福永 誠司湯地 忠彦東 祐二藤元 登四郎関根 紀子田村 俊世
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抄録
【はじめに】脳卒中片麻痺者(CVA)の回復期運動療法において,ADLレベルに即した機能回復プログラムを構築するのが一般的である.CVAの運動負荷に対する心肺機能は,年齢や麻痺の重症度,発症からの期間のみならず,ADLレベルの違いにも左右されると考える.しかしながら,重篤な心疾患等のリスクが生じない限り,負荷量が重視されることは多くない.そこで今回,坐位保持可能レベルの症例で遂行可能な有酸素運動プロトコルを設定し,施行中の酸素摂取量の変化を計測し,ADLレベルごとの比較を行った.
【対象】当院入院中で指示理解良好なCVA6名(男性4名,女性2名,下肢Brunnstrom stage IV )とし,ADLにおける歩行自立群3名(gait群,年齢56.5±14.9歳,FIM 98.5±12.0)と車椅子使用群3名(w/c群,年齢65.33±15.59歳,FIM 75.7±19. 6)に二分した.発症からの平均経過日数は,gait群で92.0±45.3日,w/c群で153.5±74.23日であった.
 なお,本研究は当院倫理委員会の承諾を得て,全ての対象者よりインフォームドコンセントを得た後実施した.
【方法】心肺運動負荷試験の際にはエルゴメータやトレッドミルを用いるのが一般的であるが,CVAでは遂行困難な例が多い.そのため,今回は運動負荷のシステムとして,CYBEX(CYBEX NORM,CYBEX international)を用い,負荷量0ニュートン,屈曲0度から90度の膝関節伸展運動を設定した.運動は非麻痺側にて行い,メトロノームを使用し10回/分の速さで行った.運動時間は5分間とし,前後に3分間の安静時間を設けた.呼気ガス分析装置(METAVINE-N,ヴァイン)にて酸素摂取量(V(dot)O2)を計測するとともに,血圧,心拍数,SpO2を計測した.また,対象者の体型の違い等を考慮し,運動時のMETsを算出し,gait群とw/c群間とで比較した.
【結果及び考察】今回使用した呼気ガス分析装置は,CVAに対しても使用可能であった.6例全てに関して運動開始直後より収縮期血圧,心拍数,V(dot)O2の上昇を認めたが,運動中の変動は少なく安定していたことから,6例ともAnaerobic Threshold(AT)レベル以下での運動負荷であったと考える.また,METsは,gait群と比較してw/c群が高い値を示す傾向にあったことから,同一の負荷でもw/c群の方が大きい負荷量になっていることが示唆された.
今後の課題として,今回設定した運動負荷プロトコルにおける時間・負荷量とCVAに対し通常行われるトレーニングの負荷量との関連性の検討があげられる.また,ADLレベルのみならず,麻痺の重症度等の因子を加味した上で,例数の追加および各症例の経時的変化の追跡も重要と考える.
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© 2005 日本理学療法士協会
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