理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 666
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神経系理学療法
視覚・足底面依存性からみた脳卒中片麻痺の臨床的バランス指標
*内山 靖臼田 滋
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抄録
【目的】バランスは静的姿勢保持、外乱負荷応答、随意運動に分類され、それぞれに対応する評価と治療を包括的に進める必要がある。このうち外乱負荷応答の検査は、負荷量を一定にするために高価な機器が必要となったり、動的な刺激量が大きい場合には適用できる対象者が限定されるなどの実用性に課題が少なくない。
 そこで本研究では、広義の外乱負荷に属する視覚・足底面依存性からみた臨床的なバランス指標を提唱するとともに、脳卒中片麻痺におけるバランス障害の特性を一層明らかにすることを目的とする。
【方法】対象は、文書によって研究の同意が得られた脳卒中片麻痺93名であった(平均年齢68.4±11.6歳、男:58名・女:35名、右片麻痺:38名・左片麻痺:55名)。なお、除外基準は重度な痴呆、純粋なパーキンソニズムと運動失調、立位保持が不能な例とした。
 検査課題は、15cm開脚立位における閉眼(視覚外乱)と不安定な足底面による外乱負荷とした。条件はA)静的姿勢保持、B)閉眼、C)足底面外乱、D)閉眼+足底面外乱とし、各検査は上限を30秒とした遂行可能時間を計測した。評価指標は、1)いずれの課題もできないものからAからDの全ての課題ができるものまでを5段階に分類した重症度、2)C/AおよびD/Bによる足底面依存率、3)B/AおよびD/Cによる視覚依存率とした。
 その他に、一般神経学的な情報に加えて、Timed Up and Go test(TUG)、Functional Movement Scale(FMS)、modified Functional Ambulation Category(mFAC)を計測・調査し、分散分析後の多重比較、SpearmanおよびPearsonの相関係数を用いて上記3指標と相互に比較した。
【結果および考察】1)の重症度は、TUG(r=-0.497)、FMS(r=0.787)、mFAC(r=0.658)といずれとも有意な相関関係を認めた(p<0.01)。また、2)の足底面依存率はTUG、FMS、mFACのいずれとも有意な関係(p<0.01)を認め、その係数の大きさは0.437から0.725であった。3)の視覚依存率は、TUGとは開眼時には相関がなく閉眼時でも係数は低く、FMSとmFACでは有意な相関を認めた。ただし、FMSでは足底面依存率の相関係数より小さく、mFACでは同程度であった。 
 本研究で用いた検査条件および重症度分類は、立位保持が可能であれば実施可能となり天井効果も小さいことから広い適用範囲をもつ臨床的な評価尺度であった。また、脳卒中片麻痺では足底面および視覚依存性を含めた障害特性を明らかにすることの重要性が示され、臨床的にバランスをとらえる指標としての有用性が示唆された。
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© 2005 日本理学療法士協会
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