抄録
【はじめに】急性期脳血管障害患者に対する早期起坐・起立・歩行のプログラムの普及は、装具使用時期を速めた。当院においても早期から起立・歩行練習に装具を適用し、効果をあげていることを報告している。特に、長下肢装具(以下LLBと略)の使用は、初期の起立獲得のため重点的に用いられることが多く昨年入院した患者の約30%の脳血管障害患者に用いられている。しかし、使用状況の中で患側下肢のみの適応よりも両側で用いられる症例が多いことを経験した。そこで今回当院の使用状況から両側で用いられる理由を片側で用いられた症例と比較し、検討したので報告する。
【対象・方法】2003.4~2004.3まで当院に入院し脳血管障害と診断され理学療法を施行し退院した患者208例のうちLLBが適用となった患者66例(両側38例 片側28例)。両側例と片側例の2群に分類し1)年齢 2)入院期間 3)発症からPT開始までの期間 4)発症からLLB装着までの期間 5)LLB装着初期時の下肢ステージ 6)LLB装着初期時のG.C.S(Glasgow coma scale)なお検定は、1)~4)の項目に関しては、t検定を使用し、5)~6)の項目に関しては、Mann-WhitneyのU検定を使用した。
【結果】1)年齢は両側群平均74.5歳(36~100歳)片側群平均66.0歳(47~89歳)で有意差(5%)が認められた。2)入院期間は、両側群平均90.7±10.5日(34~316日)片側群平均96.2±15.7日(5~318日)で有意差は認められなかった。3)発症からPT開始期間も両側群平均5.6±1.3日(0~15日)片側群平均3.0±1.0日(0~26日)で有意差は認められなかった。4)LLB装着までの期間は両側群平均11.7±1.5日(1~34日)片側群平均6.9±1.2日(1~24日)で有意差(p=0.05)が認められた。5)下肢ステージは両側群・方側群各々 stage1: 22・3 stage2: 9・17 stage3:4・4 stage4:2・4 stage5:1・0 であり有意差は無かった。6)G.C.Sは13点以上が両側群12例、片側群19例。 12点以下が両側群26例、片側群9例であり有意差(p=0.05)で認められた。
【考察】両側群と片側群を比較すると、麻痺の重度差で適用になるのではなく、年齢・LLB装着までの期間・PT開始時のGCSが重要な意味を持っていた。LLBを装着する場合、ほとんどの場合、麻痺の重度な患者に対して適応になるため、麻痺の程度は影響しなかったと考える。むしろ、GCSの重度性は、早期起立の機会を遅らせる。そのためベッドレスト状態で3日以内に生じるとされている筋萎縮を健側下肢に生じさせるため両側にLLBを用いたと考える。このことより、重度片麻痺患者を起立させる場合、健側下肢の支持性が起立のための必要因子になると考える。さらに高齢者の場合、健側の筋力低下は、加齢による萎縮も加わるため、片麻痺であっても両側にLLBを使用する頻度が高いと考える。