抄録
【目的】我々は,調整機能付き後方平板支柱型短下肢装具(Adjustable Posterior Strut AFO:以下APS)の開発を進めている.自由度制約という概念から開発中のAPSは,機能性,外観性,調整性という相反しやすい3つの臨床ニードを同時に満たすと考えられる.現在,臨床応用として片麻痺患者にAPSを作製して歩行を行っている.APS使用時の歩行分析を従来から使用している装具との比較を含めて報告する.
【対象と方法】当院に入院または外来通院でリハビリテーションを行っている片麻痺患者7例(5例はAPSを作製,2例は評価用APS使用)を対象に検討を行った.APSを作製した.歩行は,全例とも従来型の装具を使用して修正自立レベルであった.APSについては,患者の状態にあわせてカーボン支柱の硬度,初期屈曲角度,可動範囲を最適に調整したと判断した状態で使用した.
対象者に従来型装具,APSの両装具を使用し快適平地10m歩行速度を計測した.また,トレッドミル歩行分析として,トレッドミル上を平地快適速度で30秒間連続歩行したときの歩行周期,3次元動作解析の計測を行った.なお,トレッドミル歩行時の手すりの使用は許可した.
検討項目として,歩容では重複歩距離,麻痺側ステップ長,非麻痺側ステップ長を両装具で比較・検討した.3次元動作解析では,3次元動作解析システムKinemaTracer(キッセイコムテック社製)を使用して関節角度変位,連続歩行時の各部位の運動軌跡リサージュ図形を両装具で比較した.
APSの外観,重量感,使用感などの主観的評価のため対象者にアンケートを実施した.
【結果】快適平地10m歩行速度は,全例,従来型装具と比べAPSの方が有意に速い結果となった.歩容も,重複歩距離,麻痺側ステップ長,非麻痺側ステップ長の全てにおいて全例APSで増加した.関節角度変位では,APSの方が踵接地から足底接地にかけての足関節底屈や膝関節屈曲がスムーズに行われる傾向にあった.また,股関節の屈曲伸展角度が増加した症例もあった.リサージュ図形では,APSで矢状面の重心,足関節,膝関節のリサージュ図形,水平面の足関節,膝関節のリサージュ図形などが特徴的な軌跡を示し,従来型装具と異なる結果となった.
【考察】APSを片麻痺患者において臨床試用した.APSを使用した片麻痺患者全例において,従来型装具との比較結果から歩行速度や歩容の改善が得られ,自由度制約機能を通したAPSの効果を確認できた.これらのことから,APSは片麻痺患者の装具として有効であると示唆された.また,アンケートから外観性の受け入れも良好であった.APSは,重症例から軽症例まで幅広い適性が期待できる装具と考えられた.