抄録
【目的】半側空間無視(以下、USN)の理学療法では、急性期は重症者の場合、覚醒水準の向上によりUSNの改善を図ることや後頚部への電気刺激、視覚追試などUSN症状軽減への直接的治療アプローチなどが報告されている。しかし、脳機能の回復がプラトーとなる回復期以降についての報告は少ない。そこで、本研究では回復~慢性期のUSN症例に対する臨床での理学療法の実態・特徴を把握するため、USN症例を重症度分類し、担当PTにUSNの理学療法に関するアンケートを行ったので報告する。
【対象と方法】対象は、青森県内5施設のUSNを呈する脳卒中片麻痺患者14例(男性9例、女性5例、年齢50歳~74歳、平均65.8歳、発症からの期間62日~1283日、平均320.29日)である。方法は、BIT行動性無視検査日本版を行い、Halliganらの方法に従って通常検査及び行動検査におけるカットオフ点以下の下位検査数で正常・軽度・中等度・重度に分類した。また、USN評価・治療アプローチ内容(選択・記述)について担当PTにアンケートを行い、その結果をUSN重症度に応じてまとめた。
【結果】USN重症度は、通常検査による分類では、正常1例、軽度1例、中等度7例、重度5例であり、行動検査による分類では、軽度3例、中等度7例、重度4例であった。担当PTへのアンケートは11名(延べ14名)に行った。USN評価は、11名すべてのPTが行動観察で評価をしており、そのうち3名のPTが線分二等分などの机上検査も合わせて行っていた。USNアプローチは、重症度に関係なく言語や視覚を用いた見落としへのフィードバックが行われていた。また、重症度が増すにつれて刺激や手段を増やしてアプローチを行い、無視側へ注意を促している。しかし、臨床では様々な刺激や手段を用いたアプローチを同時に行っているため、PT自身どのアプローチがUSNの軽減・改善に有用であるかわかりにくいと思っている(11名中7名)という結果が得られた。
【考察】USN症例に対し、網本らは発症からの時期、重症度、利用できるモダリティなどを詳細に検討することにより、適切な治療法を提供できると報告している。今回の結果からは、回復~慢性期のUSN症例に対して、PTは動作や行動を通じて評価を行い、その中で言語や視覚など様々な刺激や手段を用いて、重症度に関わらず無視側へ注意を促すアプローチを行っていると特徴づけられる。すなわち、評価も治療も無視側への注意に限定されている傾向が見られる。今後、USNの重症度別治療アプローチの効果やUSNの有無による脳卒中片麻痺患者の理学療法の違いなどに関して調査することにより、USNの理学療法の実態や特徴をさらに明確にしていくことが課題になると思われる。