抄録
【目的】当院で実践しているFull-time Integrated Treatment (以下,FIT )programは,空間と情報の共有・統合により,多量(毎日)で高密度(全日)のリハビリテーション(以下,リハ)を可能とする回復期リハのシステムである.このFIT programが,従来のリハに比べより短い在院日数で,より大きなADL改善をもたらすことを我々は報告してきた.また,FIT programによる治療効果の優位性が退院後に維持されている結果も得られている.今回は,FIT programによる治療効果の退院後の優位性をより長期的に調査したので報告する.
【対象・方法】対象は2000年12月以降にFIT programによる治療を受け,退院後6か月および18か月の計2回の時点でFunctional Independence Measure(以下,FIM)運動項目を追跡調査できた,テント上に一側性の病変を有する初発の脳卒中片麻痺患者77名とした.入院中,訓練に支障を及ぼすような重篤な併存症を有していた症例,今回の発症以前に明らかなADL障害を有していた症例,また退院後に脳卒中を再発した症例は予め除外した.ADL調査は,退院後6か月と18か月の時点でFIM質問紙を郵送して行った.このFIM質問紙は,当院にて新たに作成されたフローチャート式の質問紙であり,その信頼性は確認済みである.返信後不備のあった場合には,電話での補足確認を加えた.経過の検討として入・退院時,退院後6か月と18か月の4期においてFIM運動項目合計(以下,FIMM)の平均点を比較,検討した.また,退院後6か月と18か月のFIM各項目の平均点変化を比較した.
【結果および考察】FIMM平均点推移では,退院時と比較すると,退院後6か月と18か月では有意に低下していた.しかし,6か月後のFIMMが18か月後にさらに低下する傾向はなく,維持されていることが確認された.FIM各項目別の平均点でみても,退院後6か月と18か月を比較すると特定の項目が低下する傾向は認められず,全項目において維持されていた.
これまでの先行研究ではリハビリ施行後,達成されたADLレベルを維持することは困難な場合が多いと報告されている.とりわけ,従来よりも短い在院日数で大きなADL改善の効果が得られるFIT programでは,退院後の低下が懸念されていた.今回の結果より,退院後6か月の時点でADL能力は低下するものの,退院後18か月の時点では更に低下することなく維持されていることから,ADL能力低下の要因として経時的低下ではなく,病院環境と住宅環境の差異による低下と考えられる.また,FIMM項目別の比較の結果では,特定の項目の低下を認めないことから,入院中のADLに密着した訓練により,どの項目においても十分に訓練・指導が行えていたことが示唆された.今後の課題としては,退院直後のADL能力低下を軽減するために,入院時により高いADL能力獲得を目指し,退院時のADLレベルを上げるだけではなく,在宅生活のシミュレーション訓練の強化,外泊などによる在宅生活のリハーサルの機会を増やすことが重要であると考えられる.