抄録
【目的】
脳卒中患者において身体的機能が住生活上で,どのような影響を与えているのかということに関しては,十分なエビデンスが蓄積されているとはいえない。本研究の目的は,脳卒中患者の身体的機能と居住環境の中で行われる住生活との関連性を明らかにすることである。
【方法】
対象は在宅の65歳以上の脳卒中患者であり,調査において支障となる痴呆,高次機能障害等がない者とした。調査は,調査員が個別に直接面接して行った。調査項目は,基本属性(氏名,年齢,性別,診断名,障害名等),住宅状況(居住形態,所有状況,居住年数,居室数,住宅改修の有無等),身体的機能(SIAS),居住環境(居住環境評価尺度),ADL(バーサルインディクス),IADL(FAI),健康関連QOL(EuroQol)が挙げられる。統計処理は,統計解析システムSPSS11.5を使用し,対象者のSIASスコア及び各居住環境評価尺度に関してスピアマンの順位相関係数にて分析を行った。
【結果】
調査対象者は36名(男性22名,女性14名),平均年齢73.0±5.35歳,疾患は脳出血6名,脳梗塞30名,障害は右片麻痺19名,左片麻痺16名,その他1名,発症からの経過月数は56.58±76.86ヶ月であった。居住形態及び住宅所有については,福井県の地域性を反映し,一戸建て持ち家の者が35名(97.22%)であった。居住年数は36.56±18.26年,居室数は7±2.85室,22人(61.11%)が身体機能に合わせた住宅の改修を行っていた。
SIASスコアは,平均58.89±12.35点,各居住環境スコアは保健性スコア平均51.89±10.79点,利便性スコア平均84.81±18.63点,安全性スコア平均62.5±17.16点,帰属性スコア平均45.39±7.77点であった。
SIAS合計スコアと各居住環境評価尺度のスコアについてみると,利便性尺度と安全性尺度において比較的強い相関が認められた(r=0.417,0.414,p<0.05)。特に,利便性については下肢機能,体幹機能,関節可動域,健側機能,安全性に関しては下肢機能,体幹機能,関節可動域との比較的強い相関が認められた。
【考察】
脳卒中患者の生活機能や障害構造が,環境因子からの影響により様々な修飾を受けることは,ICFの概念を持ち出すまでもなく,臨床では日常的に経験されることである。また,身体的障害は,ADLや屋内移動を制限し,住生活を著しく低下させることも容易に予想される。本研究の結果より,居住環境の中で特に,安全性や利便性の側面は身体的機能の障害との関連性が比較的強い事が示唆された。脳卒中患者においては,より居住環境を意識したアプローチが重要であると考える。