理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 866
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神経系理学療法
結節性多発動脈炎により重度の末梢神経障害を呈した1症例を経験して
*野元 梢瀬戸口 佳史松本 秀也中島 洋明大勝 洋祐長濱 吉幸上村 明子
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抄録
【はじめに】
結節性多発動脈炎(以下PN)は、全身の中・小動脈の内・中・外膜を侵す血管全層炎で高熱、体重減少、腎症状、末梢神経障害、筋力低下、皮膚症状などが出現する。膠原病のなかでは予後不良でステロイド剤大量投与が治療原則となっているが寛解しても、末梢神経障害による知覚・運動障害などQOLの低下が続く場合があるといわれている。今回、重度の末梢神経障害を呈した症例で歩行能力の向上がみられたので報告する。
【症例紹介】
80歳女性、診断名:PN、急速性進行腎炎、両下肢麻痺 平成15年10月27日頭痛、微熱持続し11月28日両上下肢脱力、痺れ感出現し、ほぼ寝たきり状態で重篤な腎障害認めた。近医でステロイドパルス療法施行し、腎機能等徐々に改善あり平成15年12月9日よりリハ開始し平成16年4月7日当院入院となる。
【PT評価・経過】
平成16年4月7日リハ開始し両下肢足背部浮腫あり感覚は足部表在・深部重度鈍麻~脱失、痺れが両手両下腿~足部に著明で、ROM正常。MMT両上肢G両下肢(足部は除く)F~G-両足部Z体幹Fで下垂足認めた。病棟ADL一部介助で歩行はロフストランド杖、両AFO使用で30~40m軽介助要し10m歩行時間29秒で易疲労性だった。FIM運動得点72点。アプローチとして床上でのROMex、体幹、下肢への筋力強化、四つ這い、膝立ち位バランスによる感覚入力、装具なしの立位練習、装具使用で歩行練習を行った。目的は殿筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、下腿三頭筋を中心に筋力強化、足底感覚入力困難であったため感覚入力は残存部位からのフィードバックにて行い、歩行練習以外は装具なしで行った。3ヶ月後で歩行は四点杖、両AFO使用し10m中等度介助要し徐々に介助量軽減した。8ヶ月後は両下肢足背部浮腫軽減し疲労訴え減少。感覚・痺れには変化がなかった。MMT両上肢G両下肢G両足部Z体幹Gで歩行は一本杖、両AFO使用にて200m監視で10m歩行時間11秒となり歩行能力の向上が認められた。FIM運動得点77点。
【考察・まとめ】
本症例は、全身状態が安定しリハに対しモチベーション高く積極的に行うことができた。問題点である足底感覚障害に対しアプローチとして膝立ち位や片膝立ち位をとり残存部位からのフィードバックを促し、繰り返し行うことで姿勢制御機構の構築と単関節筋である腸腰筋や殿筋の活動量が増し体幹の支持性につながったと考える。さらに、近位筋の安定が二関節筋である大腿四頭筋やハムストリングスの運動出力を引き出したと考える。また、筋力強化は過用性に注意した。これにより、予後不良な本疾患であるが歩行能力の向上、FIMの改善が認められた。しかし、発症から1年経過し、現在でも四肢末梢に強い感覚障害と運動麻痺で実用的歩行移動の獲得には至っていないため重度の末梢神経障害に対するアプローチは今後の検討課題である。
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© 2005 日本理学療法士協会
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