抄録
【はじめに】
脳外傷者の後遺症として、身体障害だけでなく認知障害があり、また情緒、行動など情意面の障害も、これが認知障害と相互に作用して、リハビリテーションが困難となるケースが少なくない。今回、頭部外傷により四肢・体幹の失調性麻痺、知能低下を呈した13歳の女性に対し、リハの各療法及びカウンセリングを行いながら身体機能の向上、精神状態の安定が図れたので報告する。
【症例紹介】
13歳女性、平成16年2月26日、乗用車に跳ね飛ばされ、脳挫傷、外傷性くも膜下出血を生じ、昏睡状態、四肢麻痺、にて前医救急搬送、集中治療で救命された後、4月20日当院転院する。入院時の状態:JCSI‐2、発声なく呼名にうなずきYes-No反応で簡単な内容なら意思疎通可。ミキサー食、飲水可。四肢・体幹の失調性麻痺、筋緊張低下にて頸部・体幹の支持性低下。寝返りのみ自立、ADLはほぼ全介助であった。
【経過】
4/21PT開始。端座位中介助要し、頸部正中位保持困難。SLB装着にて立位全介助。FIM23 /126点、易疲労性、耐久性低下著明。覚醒・身体機能の向上に伴い、自己の洞察力が増し、「死」に対する言動、念慮があらわれてきた。記憶力・発語向上、表情が明るくなる一方、失敗や一人でできないことに対して劣等感をいだき、自己の身体を受け入れられず、自分を責める言葉が増える。6/19 起き上がり、座位保持自立。歩行器歩行軽介助FIM61 /126点。精神面に不安定さがあり、感情の起伏が激しい。他者に対し攻撃性が増すが、ストレス発散となっている。7/27立ち上がり、立位は手すりにて可。ロフストランド杖中介助歩行可。現在の自己能力を超えると、出来ずに落胆し、自殺企図がみられる。ADL一部介助から監視。失調性四肢不全麻痺、体幹失調、構音障害、健忘症状、注意障害、脱抑制等の改善、推定IQ79から、本人、家族の希望である復学を目標に教育を受けながらリハのできる養護施設への入所決まる。8/31歩行自立には至らなかったが、立位保持は監視にて可能(FIM86 /126点)退院となる。
【考察】
本症例は記憶の向上に伴い、自己の身体面への気づきによって、出来ないことに落ち込み、自分を責めるということがみられた。また注意障害や抑制障害が著明となってきており、そのため理学療法を遂行困難となることがみられた。しかし快刺激によって気分が紛れるということがみられるため、遊び感覚的なことを取り入れつつ、体幹の同時収縮、協調性の改善を中心にアプローチしていった。また患者の障害に対しての受容や心理状況を配慮しながら家族、臨床心理士、各スタッフとの連携を図った。患者の訴えに傾聴し、共感していくことで、信頼関係も生まれ、他者への気づかい、感情のコントロールが改善でき、士気を高めることができたと考える。