理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 881
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神経系理学療法
脳卒中急性期片麻痺患者における歩行イメージ再学習後の歩容変化
*大橋 麻美保坂 章夫岡田 利香久保 通宏関根 由里古谷 信之増岡 泰三後藤 博
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抄録

【目的】
我々は以前、脳卒中片麻痺患者におけるビデオを使用した歩行イメージ再学習を試み、ビデオ観察後に歩容の改善が認められたことを他学会にて報告した。歩行訓練前に視覚イメージ入力を行うことで、主に体軸の傾きやリズムに改善がみられた。そこで今回歩行中の体軸偏位および単脚支持時間の左右比について検討し、若干の知見を得たので報告する。

【対象・方法】
 当院入院中の脳卒中片麻痺患者のうち、訓練室にて軽介助~近位監視レベルで連続100m程度の独歩およびT字杖歩行訓練を施行している患者19名。内訳は男性15名、女性4名、右片麻痺6名、左片麻痺13名であった。また著明な視覚障害がなく、訓練進行上理解力に問題がない患者とした。

健常男女各1名の直線歩行をビデオ撮影し、男女各5分間計10分間の歩行イメージ再学習ビデオを作成した。歩行スピードはゆっくりの1m/secとし、前方・側方・後方の3方向から撮影した。対象患者は通常のPT訓練を行った後、静かな個室にて椅子に腰掛け、歩行イメージ再学習ビデオを観察した。ビデオの前半5分は漠然と観察し、後半5分はビデオに合わせて自らリズムをとり、対象患者がもっている歩行イメージとマッチングさせながら観察した。対象患者のビデオ観察前後の歩行場面をビデオ撮影し、撮影した画像より体軸の偏位および麻痺側・非麻痺側の単脚支持時間の左右差を算出し、t検定を用いて比較検討した。

【結果】
ビデオ観察前に歩行中の体軸が左右いずれかに偏位していた症例は17名あり、そのうちビデオ観察後に体軸が正中位へ変化した症例は13名で、有意に改善していた(p<0.01)。また、単脚支持時間の左右比がビデオ観察後に50:50%へ近似して改善した症例は13名で、有意差が認められた(p<0.01)。

【考察】
脳卒中片麻痺患者は歩行イメージを明瞭に想起することが困難になっていることが多く、歩行イメージは我々PTの外的フィードバックにて作られている可能性が高い。今回視覚的に正常な歩行イメージを入力したことで、その情報が患者の中で運動イメージへと変換され、体軸の改善や左右均等な体重移動として運動出力された。イメージ想起により補足運動野が賦活することは知られており、運動イメージと感覚は類似しているとされていることから、今回の改善との関連が示唆される。また今回のビデオ観察後、対象患者からは「歩行しやすくなった」「歩ける気がしてきた」「いつも指導されている意味が具体的に分かった」との意見が聞かれ、歩行訓練の一環として視覚による正常歩行イメージ入力が有用な方法であることが考えられた。

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© 2005 日本理学療法士協会
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