理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 885
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神経系理学療法
軽度片麻痺患者における上肢荷重連鎖の特性
*佐藤 成登志立石 学林 豊彦中村 康雄
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抄録
【はじめに】我々は第37回の本学術大会において,ヒンジレバー型負荷装置を用いた検査システムを開発し,簡便かつ定量的に上肢運動機能を評価できることを報告し,第38回の大会において,健常者と片麻痺患者の比較から上肢荷重連鎖のメカニズムを分析した.今回は,特に軽度な運動麻痺を呈する片麻痺患者に着目し,データを追加して,健常者との比較から上肢荷重連鎖のメカニズムを再度分析し,軽度片麻痺患者の上肢機能の特性について述べる.
【実験方法】被験者:四肢・体幹に障害の認められない成人10名(以下,健常群)と,軽度片麻痺患者10名(以下,軽度片麻痺群)とした.上肢Brunnstrom Recovery StageVが7例,IV~Vの移行期が3例であった.測定システム:大転子,肩峰,外側上顆,尺骨茎状突起,レバー側面,ヒンジレバー型負荷装置と力覚センサとの連結部に付けたカラーマーカの運動をCCDカメラで撮影し,上肢とレバーの運動を2次元計測する.これらのデータと個人データから関節角度および関節モーメントを算出する.手順:(1)被験者を椅子に深く坐らせる.(2)被験肢でレバーを握り,合図とともに任意の速度でレバーを前方に押す.ヒンジレバーの軸トルク1.47[Nm],サンプリング周波数30[Hz],測定時間5[s],ヒンジレバー角の可動幅の3%を閾値として,運動の開始と終了時点を決定した.
【結 果】(1)関節角度:健常群では各関節とも滑らかな角度変位を示し,体幹,手関節の角度変位は少ない傾向にあった.軽度片麻痺群では健常群と同様な角度変位を示す群と動作前半から肩関節の屈曲角度の増加を認めた群があった.動作全般における関節角度の平均値において,健常群に比べ軽度麻痺群の角度変位が小さく,手関節は不規則な運動を呈する傾向にあった.(2)関節モーメント:健常群では肩関節の伸展から屈曲方向への変位,肘関節の屈曲から伸展への緩やかな変位,手関節の掌屈方向から背屈方向への変位を示す傾向にあった.動作全般における関節モーメントの平均値において,健常群では中手指節間関節(以下,MP関節)が屈曲,手関節が掌屈,肩関節が伸展優位であった.軽度片麻痺群ではMP関節,手関節の値は小さく,肩関節が屈曲優位であった.
【考 察】臨床上,上肢の軽度な運動麻痺の評価は,スピード,巧緻性,筋力や握力を指標としている.さらに本システムを用いると,動作における上肢の力学的な特性を定量的に評価することが可能である.本システムは矢状面上からみると5つのセグメントからなる閉連鎖系であり,運動の自由度は拘束を受ける.従って一つの関節が隣接の関節に影響するといった運動連鎖の影響を大きく受ける.今回の結果では,健常群において滑らかな関節角度の変位と協調性のとれた関節モーメントの変位を認めた.一方軽度片麻痺群では,運動麻痺によりMP関節,手関節の屈曲モーメントが減少し,その代償として肩関節の屈曲モーメントの増加といった特性を認めた.
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© 2005 日本理学療法士協会
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