理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 886
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神経系理学療法
外傷性脳損傷がバランス機能に与える影響
*砂堀 仁志岡西 奈津子大谷 拓哉金村 尚彦稲津 恵美室田 和之立岩 康治前島 洋飛松 好子吉村 理丸石 正治
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抄録
【目的】
外傷性脳損傷は脳の機能不全が広範囲に生じ,その結果,外観上の運動障害がほとんどないにもかかわらず,日常生活,社会生活の制約が生じる場合が多く認められる.しかし当センターにおいて,著明な麻痺が認められず,日常独歩が可能な患者においても,身体機能の低下を訴える場面が多く認められた.その要因の1つとして,バランス機能の低下が考えられる.今回,独歩可能なび漫性軸索損傷者を対象に,いくつかのバランス機能検査を実施し,健常者データと比較することで,外傷性脳損傷者におけるバランス機能低下の特異性を明らかにすることを目的とした.

【対象と方法】
対象は,MRI画像からび漫性軸索損傷と診断された若年男性10名を外傷群,年齢を一致させた健常男性10名を健常群とした.基礎データとして,現病歴,既往歴,運動麻痺,足底感覚の有無を測定した.バランス機能検査として,足関節背屈角度,握力,最大一歩幅,10m歩行時間(通常,最大),Functional Reach(FR),Functional Balance Scale(FBS),Timed Up and Go test(TUG),閉脚立位時間(開眼,閉眼),継ぎ足立ち時間(開眼,閉眼),片脚立位時間(開眼,閉眼),30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)を実施した.正規性が認められる場合は,Student's t-testまたは,Welch's t-testを用い,正規性が認められない場合は,Mann-Whitney's U testを用いて検定を行った.

【結果】
運動麻痺,足底感覚の鈍磨は全対象で認められなかった.以下の項目(外傷群平均値,健常群平均値)で有意差が認められた.足関節背屈角度(11.5°,24.3°),握力(38.9kg,45.0kg),最大10m歩行時間(5.4s,4.1s),FR(35.6cm,41.9cm),TUG(8.5s,6.4s),閉眼継ぎ足立ち時間(17.1s,30.0s),開眼片脚立位時間(24.6s,30.0s),閉眼片脚立位時間(11.9s,28.3s),CS-30(17.6回,32.4回).その他の項目は有意差が認められなかった.

【考察】
10m歩行時間(通常),FBSといった項目には有意な低下が認められない一方で,支持基底面の縮小を要求した継ぎ足立ち時間,片脚立位時間の低下が認められ,日常生活動作では明らかにならない平衡機能の低下が疑われた.これは,外傷性脳損傷におけるバランス能力の特徴であると考えた.しかし,足関節背屈角度の減少,握力,CS-30といった筋力を現すパラメーターの低下も認められており,長期の臥床による柔軟性の低下,筋力の低下による影響は否定できない.今後は,重心動揺計を用いたより詳細な平衡機能検査を行うことや,臥床期間,経過年数の把握が必要となると考える.
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© 2005 日本理学療法士協会
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