抄録
【いとぐち】一般に脳幹部の脳血管障害患者の転帰は不良であると思われているが、当院で行っているこのような患者に対するリハビリテーション(リハ)・アプローチとその転帰を検討した。
【対象と方法】2003年11月~2004年5月に当院に発症直後から入院し、急性期病棟から回復期リハ病棟を経て退院した全11例(男8、女3、年齢50-79歳、平均68歳)を対象とし、リハ開始時と退院時のimpairment、ADL、FIMと行ったリハ・アプローチを比較検討した。
【結果】リハ開始時のFIM(平均71.7)と退院時のFIM(平均99.8)を比較すると、有意に改善していた(p<0.01)。(1)梗塞性病変(9例):梗塞の主座は橋7例(いずれも腹側で片側病変)、中脳2例(いずれも片側で、大脳脚から視床の病変1例、被蓋病変1例)であった。発症から退院までは平均90日(42-132日)、リハ開始時には、移動能力は車椅子で介助を必要とするものが5例、独歩監視が1例、車椅子・歩行器自立が1例、臥床が2例であった。行った主なリハ・アプローチは関節可動域訓練、全身調整訓練、神経筋再教育、ADL訓練であり、退院時の移動能力は独歩自立が4例、杖歩行自立が2例、四点杖自立・杖歩行監視が1例、伝い歩き自立・押し車歩行監視が1例、死亡退院が1例であった。主なimpairmentは麻痺、失調、意識障害であった。(2)出血性病変(2例):いずれも橋出血で、発症から退院までは平均64日(43-84日)、リハ開始時の移動能力は1例では歩行器で介助を必要とするレベルであったが、他の1例は血腫が大きく、水頭症も合併しており、意識障害が強く継続的な臥床状態にあった。行った主なリハ・アプローチは関節可動域訓練、全身調整訓練、神経筋再教育、ADL訓練であり、退院時の移動能力は前者では独歩が自立したが、後者は肺炎などを併発したため十分なリハ・アプローチができず、ADLはベッド上全介助にとどまった。
【考察とむすび】脳幹部血管障害に起因する障害は、病変の性質や局在部位などにより様々であるが、リハ・アプローチ上は、意識障害、麻痺、失調、また、特に中脳病変では眼球運動障害とこれによる複視が問題であった。また、本研究は、脳幹部障害といえども、意識障害が改善してくる症例では、積極的で適切なリハ・アプローチを行うことにより、麻痺や失調などの改善とともにADLも改善し、比較的良好な結果を得ることができる可能性があることを示唆した。