抄録
【いとぐち】一般にICA閉塞に伴って脳梗塞を発症した患者の生命および機能予後は不良であると思われているが、ここではこのような患者でのADLの変化をFIMを用いて分析し、良好なADL改善をもたらす要素について検討した。
【対象と方法】2004年4月~6月にICA病変に伴って脳梗塞を発症し、急性期治療後に回復期リハビリテーション病棟に入院した患者12例(男9;女3)を対象とした。発症時年齢は57-89歳、平均75.6歳であったが、発症前ADLは全例自立していた。ICA閉塞部位は右9例、左1例、両側ICAが1例であり、脳梗塞は大脳基底核3例、放線冠2例、中大脳動脈領域3例、その他4例であった。リハ開始時FIMと33~124日(平均77.7日)後の退院時FIMを比較し、FIMが改善した群(改善群)と、改善しなかった群(非改善群)に分け、各群で各FIM評価項目の変化を比較検討した。
【結果】1.非改善群:4例(男2、女2)、年齢は78-88歳(平均81.8歳)。1例はリハ開始時からFIMが満点であったが、3例は18点のままであり、これら3例ではリハ開始時に重度の意識障害(JCS:3~100)と、運動麻痺(弛緩性)があり、また、退院時にも、意識障害が残存(JCS:1~3)し、上肢は廃用手、下肢は随意運動が不可能な状態であるか痴呆のため実用的には使用できない状態であった。
2.改善群:8例(男7、女1)、年齢は57-89歳(平均72.5歳)。リハ開始時FIMは21-109 (平均54.3)、退院時FIMは33 - 124 (平均 86.4)であり、改善点数は12 - 73 (平均32.1)であった。本群でもリハ開始時には意識障害(JCS:1~3)や運動麻痺はあったが、その程度は軽く、退院時にも痴呆や精神障害(うつ)、失語、感覚障害はあっても意識障害はなかった。運動麻痺は、上肢では実用手に至った1例を除いては廃用手~補助手となり、下肢では粗大な屈曲・伸展を随意的に行うことができ、補助具を用いて歩行訓練が可能となり、4例は独歩が自立した。
【考察とむすび】ADL改善には意識障害の程度が強く影響していた。すなわち、意識障害が軽度であった症例では病棟ADL訓練を積極的に行うことができ、それに伴って十分なADLの改善が得られたが、意識障害を有する患者への介入は困難であった。意識障害が遷延する患者に対するADL改善を目標としたリハ・アプローチの検討を要する。