抄録
【はじめに】当院では脳卒中片麻痺患者の急性期に坐位安定直後から介助しながら立ち上がり訓練を行っている。訓練方法は十分な休憩を入れながら1日の立ち上がり回数が100~200回になるように行っている。さらに麻痺側下肢へ荷重(正中位立位保持)するように行い、立位バランス訓練として重視している。移乗動作はADLの向上を図るうえで重要な要素となっている。そこで今回移乗動作と立ち上がりの荷重量、立ち上がり回数がADLにどのような影響を与えているか検討した。
【対象】平成16年5月から11月までに当院に入院した初回発症で重篤な合併症や併発症がない脳卒中片麻痺患者のうち、立ち上がり訓練を行い自力にて立ち上がりが可能となった患者13例(男9例、女4例)。年齢63.5±12.3歳。脳梗塞8例、脳出血5例。右片麻痺4例、左片麻痺9例。下肢ブルンストロームステージ、1‐1例、2‐1例、3‐5例、4‐5例、5‐1例。発症してから自力立ち上がりが可能となった日数は11.0±7.4日。立ち上がり訓練を行った日数は21.3±14.4日であった。
【方法】平行棒を把持した車椅子坐位から立ち上がり、立位静止・定常状態になるまでの麻痺側下肢にかかる重量をデジタル体重計にて測定した。立ち上がり動作と体重計の表示をビデオ撮影しコンピューターに取り込んだのち、立位静止・定常状態の数値を読み取った。その数値を麻痺側下肢の荷重量と考え、体重計表示/体重×100として標準化した値を荷重量(%)とした。測定は自力にて立ち上がりが可能になった日から1週間毎、訓練終了時まで行った。荷重量30%未満の群(L群)と30%以上群(H群)でFIMの得点と立ち上がり回数をt検定を用いて検討した。
【結果】2群間でFIM移乗項目ごとに比較すると、車椅子移乗動作項目ではL群が2.5±0.4点、H群が3.7±1.2点であり、有意差が認められた(p<0.05)。トイレ移乗動作項目ではL群が2.0±0.9点、H群が3.2±1.4点であり、有意差が認められた(p<0.05)。1日の立ち上がり訓練の回数はL群で81.7±37.6回/日、H群で86.5±39.2回/日となり有意差は認められなかった。
【考察】今回の結果より、麻痺側下肢への荷重量がADLの移乗動作に大きく関係すると推測された。麻痺側荷重量が30%を超えて立ち上がりが可能となった時点で、車椅子移乗は軽介助(FIM4点)、トイレ移乗は中等介助(FIM3点)となっていると考えられた。その時期に過介助を避けるため、適切な介助方法を病棟ナースや家族へ指導する事が、患者の早期自立に繋がるものと考えられた。今後症例数を増やし、更なる検討を行っていきたい。