理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 895
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神経系理学療法
筋強直性ジストロフィー患者における上衣着脱動作の特徴
*前田 千尋石川 玲横山 瞳三上 雅史宇野 光人山口 美穂子高田 博仁
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抄録
【目的】筋強直性ジストロフィー(myotonic dystrophy,MyD)における障害進展過程を明らかにする一環として、今回、上衣の着脱動作の特徴について上肢筋力と代償運動の面から検討することを目的とした。
【対象と方法】研究協力に同意が得られたMyD患者21名(男14名、女7名、51.0±9.3歳、独歩可能9名、介助歩行4名、歩行不能8名)。上肢の筋力検査にはMMT(Strength Grading Scale、SGscale,0~10point、Florenceら、1984)を用いた。衣服としてトレーナーとジャンパーを選択し、これらの端座位での着脱場面をビデオ記録した。そして着脱の所要時間と代償運動の分析を行った。また、着脱が自力可能な者と要介助者の間で筋力値を比較した。所要時間は健常者19名(男10名、女9名、50.3±4.7歳)の値と比較した。
【結果】トレーナーの着脱は16名が自力で可能だった。平均所要時間(健常者)は、着る44.4秒(11.4秒)脱ぐ27.6秒(7.2秒)であった。他の5名は腕を袖に通す・抜く、襟ぐりをかぶる・頭から抜くなどの介助を要した。ジャンパーの着脱が自力可能だった者は、着る16名、脱ぐ19名であった。トレーナーの着脱に介助を要する5名中3名がジャンパーを脱ぐことができた。平均所要時間は、着る23.6秒(7.2秒)脱ぐ15.3秒(4.7秒)であった。介助が必要な者では、腕を袖に通す・抜く、身ごろをはおる・肩からはずすことが困難だった。対象者21名で筋力値に左右差はみられなかった。トレーナーとジャンパーの着脱が自立していた16名、ジャンパーを脱ぐことのみ自立していた3名、全てに介助が必要な2名の筋力(右のSGscale)は肩でそれぞれ6.1、3.0、2.3、肘で6.3、3.4、2.6、前腕5.9、4.8、4.0、手関節5.5、4.4、3.0であり、同様に握力は4.5、2.3、1.6kgwだった。多くの者が衣服を母指と他の4指で挟んで把持し、さらにトレーナーの裾の同じ部分を両手で把持して下げるという代償運動が多くみられた。また、動きに勢いをつける、体幹の回旋や前後左右へ傾斜を利用する、大腿に肘や手を置くなどの代償運動も多くみられた。
【考察】上肢の筋力低下によりトレーナーとジャンパーの着脱が可能な者であっても所要時間は延長し、様々な代償運動がみられた。トレーナーの着脱とジャンパーを着るためには肩屈筋・外転筋、肘屈筋の筋力がSGscaleで5 point以上必要であることが確認された。また、ジャンパーは腕が挙がらなくても体幹の巧みな動きを利用して脱ぐことが可能であり、座位での動的バランス能力が更衣動作能力と強く関係している。裾や襟を母指と他の4指で挟む傾向はMyDにみられる特徴の一つであり、手外来筋の筋力低下と把握ミオトニアが関連していると考えられる。
【まとめ】トレーナーとジャンパーの着脱には肩屈筋・外転筋、肘屈筋の筋力がSGscaleで5 point(fair+に相当)以上必要であり、動作中に特徴的な衣服の把持の仕方や筋力低下を代償する体幹等の運動が認められた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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