理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 899
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神経系理学療法
両下肢麻痺を呈したChurg-Strauss-Syndrome(CSS)の一症例を経験して
―運動機能の回復経過とその特徴―
*鈴木 沙織大島 富雄林 誠二浅田 史成大澤 傑
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抄録
【はじめに】CSS(アレルギー性肉芽腫性血管炎)は、全身の壊死性血管炎により多彩な臨床症状をきたすとされている。なかでも末梢神経障害が高率に認められ、運動麻痺に対する理学療法(PT)が必要とされる。しかし、本症に対するPT内容や、機能予後に関する報告が少なく、運動機能の予後予測・治療方法の選択が困難であった。そこで、今回経験したCSS患者一症例の、一年にわたる『運動機能の回復経過と特徴』について報告する。
【症例紹介】62歳女性。主婦。身長153.4cm、体重52.8kg。
【既往歴】気管支喘息・関節リウマチ(RA)・高血圧・網膜はく離
【現病歴】数年前より、軽度のしびれが両足底に出現し、’03.7月下旬には両下肢、手指へ徐々に広がった。同年8月6日に熱発、8月8日に右下肢脱力、起立困難、頚部痛出現した。11日、左下肢にも脱力出現し、当院入院となり、その後CSSと診断された。
【筋力の回復経過】リハ開始時、上肢に関してはMMT3~4であったが、下肢では0~2と弱かった。特に大きな変化があった抗重力筋のMMTについて、開始時→2ヶ月目→3ヶ月目→4ヶ月目→1年目の順に記載する。大殿筋力は2→2→2→4→4、中殿筋力は2→2→3→4→5、左右差は見られたが、大腿四頭筋力は0→0→2→2→2、腓腹筋力は0→0→0→2→4に回復した。筋力はリハ開始より長期間、変化を見ない期間が続くが、それを過ぎた頃より緩やかに回復を示すという特徴があった。
【深部感覚の回復経過】当初は両股関節のみ正常で、両膝・足関節で脱失していたが、リハ開始半年を過ぎた頃より回復し始め、1年後には左の膝・足関節は正常に回復した。
【ADLの回復経過】リハ開始時は、日中ベッド上臥床で、寝返り・起き上がり、車椅子の移乗等、すべて全介助であった。開始3ヵ月後には、寝返り・起き上がり、移乗は自立した。この頃、LLB装着にて平行棒内での立位・歩行訓練を開始し、近位監視にて可能となった。
6ヶ月後には、右側のみLLB装着・二本杖にて屋内歩行自立となり、屋外では、近位監視で歩行可能となった。階段昇降も、両手すり保持にて自立し、自宅へと退院した。FIMスコア-は、入院時70点から退院時117点に改善した。
【まとめ】本症例を通じて認められたCSSの筋力回復の特徴は、緩徐な回復が長期にわたるという事である。訓練開始より数ヶ月は、変化の無い期間が続くため、筋力の変化に気づかず、ADL向上のチャンスを見過ごす危険性があった。他の文献にも、『歩行不能であった症例が、1年後には筋力の回復により、装具無しの杖なし歩行が自立した』とある事から、CSS患者のリハビリテーションでは、定期的な筋力・感覚評価を長期的に行なって、その変化に応じたゴールの修正と治療プログラムの立案をしていく必要があると感じた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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