理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 901
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神経系理学療法
脳血管障害の終末期間に関する調査
*瀬戸口 佳史当真 祐二松本 秀也中島 洋明大勝 洋祐
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キーワード: 脳血管障害, 終末期, PVS
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抄録
【目的】
 高齢者のリハビリテーション(以下リハ)医療の流れとしては、寝たきりの発生を可能な限り防止する予防的リハから、急性期・回復期リハ、寝たきり等の進行を阻止する維持期リハがあり、各ステージにおけるリハの役割や提供体制の整備が急速に進められている。維持期と終末期の境界は不明瞭ではあるが、経管栄養時期と日本脳神経外科学会によるPVS(persistent vegetative state)から脳血管障害の終末期間に関する調査を行い、今後、理学療法士がどのように関わっていくべきなのかを検討した。
【対象および方法】
 PVSとは、1.自動移動不可能、2.自力摂取不可能、3.尿便失禁状態、4.発声は可能であるが意味のある言葉は発しない、5.簡単な命令には従うこともある、6.目で物を追うことはあるが認識はしていない状態で、以上の状態が3ヶ月以上持続するものを言う。今回、平成12年4月から平成16年8月の間にPVSの経過を経て死亡した脳血管障害62例を対象に、発症から経管栄養(マーゲンチューブおよび胃瘻)までの期間、経管栄養からPVS(1.から6.までの状態)までの期間、PVSから死亡にいたるまでの期間、を診療カルテおよびリハカルテより調査し、諸因子との関連性について検討した。
【結果】
 1.各調査項目の平均期間において、発症から経管栄養までは238日、経管栄養からPVSまでは138日、PVSから死亡までは504日であった。2.年代別にみたPVSから死亡までの平均期間は、69歳以下で734日、70歳台で637日、80歳以上で370日と年齢が高くなるにつれPVSから死亡までの期間が短い傾向を示した(70台-80以上;p<0.05)。3.脳血管障害発症直後から経管栄養に至った群と、しばらくは経口摂取可能であったが徐々に不能へと至った群に分け比較すると、経管からPVSまでの期間はそれぞれ平均155日、562日で有意差を認め(p<0.001)、PVSから死亡までの期間は平均541日、431日で有意差を認めなかった。発症直後から経管栄養が持続するものは、PVSへ移行する期間が有意に短縮する傾向が認められた。
【考察】
 今回の調査では、経管栄養となってから死亡に至る期間は平均1年10ヶ月であり、対象のほとんどが誤嚥性肺炎を繰り返し、そのたびに機能低下が加速するという印象が伺えた。当院では、繰り返す肺炎に対して腹臥位療法を看護部門と連携して試みているが、対象の選択、ポジショニング、頻度・時間の設定等様々な問題が生じ難渋しているのが現状である。終末期リハビリテーションにおいて、関節の過度な変形を防止することは、保清や更衣に対する介護負担を軽減し、褥瘡発生の予防にもつながることから重要であり、また呼吸を楽にするため胸郭の柔軟性を確保したり、喀痰をしやすくする呼吸理学療法も言うまでもなく大切であるが、今後、繰り返す肺炎に関与する理学療法を模索していくことが必要であると思われた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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