理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 919
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神経系理学療法
正中神経刺激療法後の理学療法実施患者の報告
*陶山 幸子
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抄録

【はじめに】意識障害急性期や遷延性意識障害に対する治療法として、正中神経刺激療法、脊髄硬膜外刺激療法などの様々な方法が試みられている。正中神経刺激療法の有用性については未だ議論が多いものの、刺激が意識状態の改善につながった報告もある治療法のひとつである。今回、当院でも意識障害急性期に主治医が必要と判断した患者に対して正中神経刺激療法を行い、実施前後において意識レベルに若干変化がみられ、その後の理学療法を実施していく上で身体機能に改善がみられたため報告する。
【対象・方法】平成16年1月から平成16年10月までに当院に入院し、入院時にJapan Coma Scale(以下JCS)2桁及び3桁の患者で、正中神経刺激療法を実施した11名(脳出血7名、クモ膜下出血2名、脳梗塞1名、急性硬膜下血腫1名)を対象とした。平均年齢は68.18±13.27歳。方法は麻痺側の正中神経に沿って低周波(PULSE CURE:OG GIKEN KR-210)を出力2mA、モードはマルチミックス、1回15分、2週間を1クールとし開始前後のJCSの変化を確認し、1クール終了後に主治医と継続について検討した。今回、正中神経刺激療法前後のJCSの変化、発症から正中神経刺激療法開始までの平均日数、実施後のmodified Ranking Scale(以下mRS)、退院時のmRS、入院期間について比較を行った。
【結果】正中神経刺激療法直後にJCSの変化が見られたのは、11名中10名であった。変化のみられなかった1名は、実施後に理学療法を継続することで意識状態の改善はみられた。発症から正中神経刺激療法開始までの平均日数は14.64±9.05日であった。実施後のmRSは直後では変化がみられなかったが、退院時のmRSは若干改善がみられた。入院期間は他の脳血管疾患患者に比べて長期化している。
【考察】遷延性意識障害とは、自力で歩行できない、自力で食物を摂取できない、糞尿失禁状態がある、目で物を追うが認識できない、簡単な命令に応ずることもあるがそれ以上の意思の疎通ができない、声は出すが意味のある発語はできない、以上の6項目がほとんど改善されないまま3ヶ月以上継続している状態を指す。今回、刺激直後に意識状態の著明な変化はみられていないが、その後の経過において意識状態の改善、身体機能の改善はみられている。身体機能の改善は、急激ではなく緩やかに改善する症例が多かった。今回の反省点としては、刺激時間や期間の設定を統一していたが十分ではなく、実際の効果として判断するには不十分であった。意識障害の患者に正中神経刺激療法を行うことで、意識状態を改善させ、その後の理学療法を円滑に実施できた症例もあったため、今後の早期理学療法の実施につなげていきたいと考えている。

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© 2005 日本理学療法士協会
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