理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 22
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骨・関節系理学療法
Recklinghausen病による巨肢症に対して下腿切断後義足歩行を獲得した一症例
*太田 善行熊田 仁大野 博司田中 一成山口 淳
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抄録
【はじめに】Recklinghausen病では,大型で弁状に下垂するびまん性神経線維腫が発生し,四肢の機能障害をきたすことがある.今回,同病により巨肢と骨格変形を呈し歩行困難となったために,下腿切断を施行し義足歩行が可能となった症例を経験したので報告する.
【症例および現病歴】30歳女性.出生直後より左下肢後面にカフェオレ斑を認めた.小学校入学より下肢の腫脹が出現し,徐々に歩行困難となる.その後,下肢の腫脹が巨大化し,歩行時の膝の痛みも出現し歩行困難を極めたため,今回下腿切断目的に入院となった.
【術前評価】左殿部から,とくに左下腿後面から足部にかけて色素斑とともに巨大なびまん性神経線維腫を認めた.左股関節ROMは伸展 -5°,外旋15°と制限を認め,足部は巨大な神経線維腫のため内反変形を呈し足部機能が著しく障害されていた.また,膝関節には外反動揺を認めた.X線検査では,左股関節と左膝関節に変形性関節症の所見と大腿骨内捻などの骨格病変を認めた.筋力はMMTで股関節2~3,膝伸展4,屈曲3.脚長差はSMDで左下肢が8cm長かった.歩行はT字杖使用にて分回し歩行を呈し,左立脚中期に股関節は内転内旋位,膝屈曲位を呈し,このときしばしば膝に痛みと膝折れを認めた.
【理学療法経過】左下腿切断術が施行され,切断肢の重量は7.5kgであった.長前方皮膚弁を用いて膝窩部遠位で縫合した.断端長21cm,機能的断端長12cm.義足はTSB下腿義足が処方された.術後出血量が多く,創治癒が遷延したため,術後2週より理学療法を開始した.股関節周囲の筋力強化を重点的におこない,術後1か月より断端に対してシリコンライナーによる圧迫療法を開始した.術後3か月より義足歩行練習を開始し,まもなく膝の痛みもなく歩行可能となり,退院後T字杖で屋外歩行が可能となった.歩行開始時,筋力はMMTで股関節4,膝関節4+~5と改善していた.しかし股関節のROMは伸展,外旋とも変化はなかった.
【考察】巨大化した下肢は歩行障害のみならず,外観上の精神的負担も大きかった。切断と下腿義足により外観的な問題を克服し,歩行練習に対する意欲も高く維持され,歩行獲得による本人の満足度も高いものとなった.皮膚の脆弱性のため,PTB下腿義足ではソケット後面での創部の接触が懸念されたため, TSB下腿義足を選択した.また,シリコンライナーによる圧迫療法は断端成熟を促し,適合感と疼痛の軽減に有効であった.このことにより義足コントロールが容易となった.今後,股関節ROM制限,股関節筋力低下の改善が課題であるが,変形性関節症の進行や原疾患の状態を注意深く観察しながら歩行能力の向上を目指したい.
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© 2005 日本理学療法士協会
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