抄録
【目的】臨床場面において、股関節周囲筋に対するアプローチのひとつとして、バランスボードを用いることは多い。しかしex.中の股関節回旋角度はあまり規定されないことが多く、これまでの報告ではその角度による股関節周囲筋の筋活動量の違いも明らかにはなっていない。そこで本研究はバランスボードex.中の股関節周囲筋の筋活動量が、股関節回旋角度によって違いがあるかどうかを調査する目的で行った。
【方法】対象は下肢に既往歴のない健常人女性10名(平均年齢26.4±2.8歳)とした。表面筋電計を使用し、利き足(全員右足)の大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、内転筋群を測定した。バランスボードex.は、左右への重心移動を、股関節内外旋中間位、外旋位、内旋位の3肢位で一定のリズムで行い、その時の各筋の筋活動量を測定した。またMMT肢位における各筋の最大収縮時筋活動量を測定し、これに対する値を%MVCとして算出した。表面筋電計はNEC社製サイナアクト(MT11)を使用し、サンプリング周波数2000Hzで測定した。解析には多用途生体情報解析プログラム(BIMUTAS2)を使用した。結果はT検定を使用し、3肢位間で各筋活動量を比較検討した。
【結果と考察】3肢位間で筋活動量に有意差がみられたのは、中殿筋の中間位(平均18.3%MVC)と内旋位(同21.3%MVC)の間、外旋位(同17.6%MVC)と内旋位の間(P<0.05)、大腿筋膜張筋の外旋位(同14.8%MVC)と内旋位(同19.9%MVC)の間(P<0.1)であった。また大殿筋においても内旋位(同45.3%MVC)が、外旋位(同41.5%MVC)、中間位(同38.3%MVC)より活動量が大きい傾向がみられた。内旋位での活動量が大きかった要因として、股関節内旋位は、大殿筋、中殿筋が伸張されることによって、筋収縮が起きやすい状態であることが考えられる。今回の結果から、どの肢位でのバランスボードex.でも、中殿筋の筋力増強ex.としては不十分な筋活動量であったが、股関節内旋位での中殿筋の活動量は、一般に歩行中に必要とされる活動量と同等であり、筋力低下を示す患者に対しては、有用なex.であることが示唆された。