理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 128
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骨・関節系理学療法
変形性膝関節症を有する自立高齢者を対象とした運動介入による無作為化比較試験
―動作能力(起居・歩行)に対する介入効果―
*三浦 久実子諸角 一記中村 信義塩沢 伸一郎佐藤 慎一郎北畠 義典西 朗夫板倉 正弥種田 行男
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抄録
【はじめに】高齢者の自立した生活の質を低下させる様々な要因の中でも変形性膝関節症(以下膝OA)は,痛みをはじめとした機能障害を伴い,動作能力の低下を引き起こす大きな要因である.従って膝OAの悪化を防ぐ事は,高齢者の自立した生活の維持に有用であると考えられる.本研究では,膝OAを有する地域自立高齢者を対象に,運動介入の動作能力に対する効果を無作為化比較試験(RCT)により検証したので報告する.
【方法】対象者は東京都武蔵野市在住の膝痛を有する在宅自立高齢者88名(男性12名;平均年齢77.7±5.4歳,女性76名;平均年齢73.2±5.3歳)で,膝痛の程度(準WOMACスコア)により層化したブロックランダム割付を行い,介入群と対照群(各44名)に分けた.対象者からは研究の目的と内容,利益とリスクなどについての説明をし,参加同意書に自筆による署名を得た上,日本疫学学会倫理審査委員会の承認を得た(登録番号04001).指導した運動プログラムはコンディショニング目的である低強度の基本体操,身体機能の程度に応じたグループ別体操,及び個別相談で構成され,介入群には3ヶ月間を介入期間として,最初の1ヶ月間は週1回,残りの2ヶ月間は隔週で,1回あたり約90分間の運動指導を計8回行った.また,対象者には指導された運動を毎日自宅で実施するよう指示し,体操日記によりモニタリングした.動作能力は,(財)明治安田生命厚生事業団体力医学研究所により開発された「生活体力」を用いて評価し,特に膝機能と関連が深いと考えられる「起居能力」,「歩行能力」の測定を行った.それぞれ,2回の測定のうち,より速い方の所要時間を解析に用いた.本研究の解析対象者は介入脱落者及び身体的理由により測定が実施できなかった者を除く,介入群36名(男性5名,女性31名)と対象群39名(男性2名,女性37名)であった.解析にはSPSS for Win Ver12.0を用いて,ベースラインでの群間の差をstudent's t検定,及び介入前後の変化を反復測定分散分析(時点数2×群数2)により比較した.
【結果】ベースライン時,「起居能力」所要時間は介入群9.2±3.3秒,対照群8.0±2.8秒,「歩行能力」は介入群8.8±1.8秒,対照群7.8±1.4秒であった.両群間の差は「起居能力」では認められず(p=0.10),「歩行能力」で有意であった(p=0.01).介入後「起居能力」は介入群7.7±2.7秒,対照群7.7±2.8秒,「歩行能力」は介入群8.0±1.6秒,対照群8.2±1.6秒であった.反復測定分散分析の結果,「起居能力」「歩行能力」ともに,時間と群の2要因の間に有意な交互作用を認めた(共にp=0.000).
【考察】以上の結果より,われわれの行った運動介入は,膝OAを有する地域自立高齢者の動作能力を明らかに改善させた.
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© 2005 日本理学療法士協会
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