理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 130
会議情報

骨・関節系理学療法
変形性膝関節症を有する高齢者を対象とした運動介入による無作為化比較研究
―運動介入がQOLに及ぼす影響―
*塩澤 伸一郎西 朗夫板倉 正弥三浦 久実子佐藤 慎一郎中村 信義諸角 一記北畠 義典種田 行男
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キーワード: 変形性膝関節症, RCT, QOL
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抄録
【目的】
 我々は昨年の第39回日本理学療法学術大会において,膝痛を有する自立高齢者のための運動プログラムを考案し,疼痛,運動機能,生活動作に明らかな改善効果があることを報告した.本研究では変形性膝関節症を有する高齢者を対象に無作為化比較試験(RCT)によって,運動介入がQOLに及ぼす影響について検討した.
【方法】
 対象は東京都武蔵野市在住の在宅自立高齢者88名(男性12名 平均年齢77.8±5.4歳,女性76名 平均年齢73.2±5.3歳)であった.膝痛の程度(WOMACスコアに準ずる膝機能評価)により層化したブロックランダム割付を行い,介入群と対照群(各44名)に分けた.介入群では3ヶ月間を介入期間として,最初の1ヶ月間は週1回,残りの2ヶ月間は2週間に1回の間隔で1回あたり約90分間の運動指導を合計8回行った.運動プログラムは強度の低い基本体操,対象者の身体機能に応じたグループ別体操であった.運動のうち,自宅で実施可能なものを毎日自主的に行うように指示した.本研究の解析対象者は介入脱落者および身体的理由により測定が実施できなかった者を除く,介入群36名(男性5名 女性31名)と対照群39名(男性2名 女性37名)であった。QOL評価ではSF-36vr2日本語版を用い,質問紙法によって収集した.QOLの総合判定としては合計点を算出し,さらに下位項目については偏差値(NBS法)を用い,両群ともに研究期間前後に回収した.統計解析はSPSS vr10.0 for Winを用い,ベースラインでの群間の差をstudent's t検定,介入前後の変化を反復測定分散分析(時点数2×群数2)により比較した.対象者には研究の目的と内容,利益とリスク,個人情報の保護,参加の拒否と撤廃について説明を行ったのち,参加同意書に自筆による署名を得た.また,日本疫学学会倫理審査委員会より承認を得た(承認番号04001).
【結果】
 ベースライン測定時の群間比較では,合計点と8つの下位項目いずれにおいても有意差は認めなかった.介入効果について,介入群と対照群それぞれベースライン測定では551.1点±93.4点,531.6点±123.8点,介入後測定では562.1点±95.7点,502.4点±136.3点であり,介入群と対照群の間に有意差は認めなかった.介入群の下位項目についてベースライン測定と介入後測定の順に示す.身体機能34.6±12.4,36.7±11.6,日常役割身体39.6±12.0,40.5±14.3,身体の痛み41.9±7.3,44.4±8.2,全体的健康感46.1±6.9,47.8±7.4となった.対照群でも同様の順に,身体機能は32.7±13.7,31.4±13.0,日常役割身体39.5±10.2,36.1±14.2,身体の痛み42.1±9.4,40.5±9.7,全体的健康感45.9±9.5,44.2±9.0となった.これら下位項目のなかでも,特に身体の痛み(p=0.06)と全体的健康感(p=0.07)において改善の傾向を認めた.
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© 2005 日本理学療法士協会
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