抄録
【目的】
我々は投球障害肘を有する少年野球選手は肩後方軟部組織の柔軟性が低下していることを報告した。今回、同症例の肩および肘関節可動域について競技復帰までの変化を調査したので報告する。
【方法】
対象は平成15年6月から平成16年10月に当院を受診した内側型投球障害肘を有し、保存治療を行った少年野球選手(10才から15才、小学4年生から中学3年生)のうち、競技復帰まで経時的に調査可能であった選手16名とした。可動域測定は両側の肩関節90°外転位の内旋(2nd IR)および外旋(2nd ER)、90°位外転位の全回旋可動域(total arc)、90°屈曲位の内旋(3rd IR)、肘関節屈曲、伸展、前腕回内、回外を、理学療法(以下PT)開始時、投球開始時、競技復帰時に実施した。各測定時期における測定値の絶対値と両側差(投球側-非投球側)の経時的変化について検討した。
【結果および考察】
PT開始時、投球開始時、競技復帰時の各可動域の両側差はそれぞれ2ndIRで-20.6°(投球側:48.8°、非投球側:69.4°),-11.4°(62.5°、73.9°),-5.9°(63.6°、69.5°)、2ndERで3.2°(131.3°、128.1°),11.4°(147.5°、136.1°),13.6°(150.9°、137.3°)、total arcで-17.5°(180.0°、197.5°),0°(210.0°、210.0°),7.7°(214.5°、206.8°)、3rdIRで-11.3°(93.4°、104.7°),-6.8°(97.1°、103.9°),-6.9°(98.6°、105.5°)、肘屈曲で-5.7°(147.5°、153.2°),-1.7°(152.9°、154.6°),-0.7°(153.5°、154.2°)、肘伸展で1.6°(6.2°、4.6°),0.2°(8.1°、7.9°),-3.0°(6.5°、9.5°)、前腕回内で-8.9°(85.0°、93.9°),0.6°(93.5°、92.9°),7.0°(97.5°、90.5°)、前腕回外で2.2°(107.9°、105.7°),-1.1°(107.7°、108.8°),0.5°(105.5°、105.0°)であった。PT開始時に比し競技復帰時では2ndIR、2ndER、total arc、前腕回内の可動域が有意に増大していた。これは、内側型投球障害肘を有する少年野球選手の肩および肘関節可動域の制限は可逆性であり、投球における肘外反ストレスの増大を軽減させる一要因となる可能性が示唆された。
【まとめ】
投球障害肘を有する少年野球選手は、競技復帰時に肩関節2ndIR、2ndER、total arc、前腕回内の可動域が増大していた。