理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 329
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骨・関節系理学療法
距腿関節背屈時における距骨の動き
*壇 順司高濱 照国中 優治中島 喜代彦
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抄録
【目的】臨床では,足関節背屈・底屈の動きは矢状面上での単軸性の動きとして取り扱われている印象がある.しかし距腿関節や距骨下関節の関節面形態をはじめとした解剖学的見地からそれは立体的かつ複雑な動きをすることが推測される.そこで今回遺体での足関節背屈操作時の距骨の動きに着目し,若干の知見を得たのでここに報告する.
【対象】熊本大学医学部形態構築学分野の遺体で,下腿の深部屈筋以外の筋を付着部より切断し,足関節の底背屈(底屈60°から背屈30°)ができるようにした左足2関節を使用した.
【方法】底屈位から背屈運動における距骨の可動方向および距骨の可動に関与する因子(関節面形態,筋,靱帯など)について観察した.
【結果】1) 距骨の可動方向:後方からみた前額面上では,脛骨と腓骨の関節面(以下,脛腓天蓋)内をやや内側に傾斜し,踵骨後距骨関節面上を内下方に移動した.水平面上では,距骨滑車前縁が脛腓天蓋前縁と一致するまで踵骨上を後方にややずれながら外側へ回旋した.外方からみた矢状面上では,外果と踵骨後距骨関節面上を後上方に移動した.内方からみた矢状面上では,内果と踵骨後距骨関節面上での移動は認められなかった.
2)距骨の可動に関与する因子:(1)前距腓靱帯が外果前縁の下方から起こり,前内方に向かって距骨頸外側部に付着していた.(2)長母趾屈筋腱が距骨の長母趾屈筋腱溝を外上方から内下方に通過しており,その溝には腱鞘が存在し,腱鞘は結合組織によって距骨に強力に結合していた.(3)踵骨後距骨関節面は丘状を呈しており,矢状面からの観察では前端は後端に比べ約40°前下方に傾斜しており,前額面からでは,内側端は外側端に比べ約15°内下方に傾斜していた.
【考察】距骨の可動方向と可動に関与する因子との関係を通して,距骨の可動メカニズムを考えると,前額面上で内下方へ移動する理由は,踵骨後距骨関節面が内下方に傾斜しているからと考えられ,水平面上で踵骨上を外側へ回旋する理由は,背屈による長母趾屈筋腱の緊張によって距骨内側部が前方へ圧迫されること,次に前距腓靱帯が背屈運動軸より下方をほぼ水平に走行し背屈により緊張すること,そして踵骨後距骨関節面の形態が内下方に傾斜していることなどが考えられる.また外方からみた矢状面上で外果と踵骨後距骨関節面上を後上方へ移動する理由は,前距腓靱帯が緊張することと,踵骨後距骨関節面形態が前下方に傾斜しているからと考えられ,内方からみた矢状面上で内果と踵骨後距骨関節面上での移動が認められなかった理由は,背屈による長母趾屈筋腱の緊張によって距骨内側部がブロックされるからと考えられる.
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© 2005 日本理学療法士協会
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