日本緑化工学会誌
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論文
都市近郊林の林床管理区および短期・長期放置区における地表性甲虫相の比較
谷脇 徹久野 春子岸 洋一
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2005 年 31 巻 2 号 p. 260-268

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抄録

都市近郊の下刈りや落葉掻きといった林床管理の施される雑木林と,管理停止後に短期あるいは長期に放置された雑木林において,地表性甲虫相をピットフォールトラップ法によって調査した。総科数,総種数および総個体数は長期放置区で最も多かった。シデムシ科の個体数割合はすべての調査区で最も高かったが,林床管理区よりも長期放置区で高かった。また,優占種であるオオヒラタシデムシの個体数と放置年数は正の相関関係にあった。シデムシ科およびゾウムシ科の個体数と落葉枝量および電気伝導度で正の相関,総個体数と土壌硬度および含水率,ケシキスイ科の個体数と相対光量子束密度および地温で負の相関が認められ,放置年数に伴った林床環境の変化に対する応答が昆虫群によって異なると推察された。除歪対応分析(Detrended Correspondence analysis, DCA)の結果,群集構造は短期放置区と林床管理区で類似したが,これらの調査区と長期放置区では異なった。また,各放置年数に特有の種群が確認された。多様な地表性甲虫相を保全するためには,林床管理の施される林分と様々な放置年数の林分をモザイク状に配置することが望まれる。

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© 2005 日本緑化工学会
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